<2943>「ねえかいたいしたの」

 ねえかいたいしたの、

 あたし、かいたいしたの、、

 どこ、どこから、

 あたしここ、次々に声、漏れるでしょ、

 ね、きこえるでしょ、

 きこえるでしょ、、

 あなたの絡みのなかにいるの、

 あなたの糸のなかに、、

 (僅かでもあたたかくなってきているということ)、

 (違う時間が生まれてゆく)、

 ねえ、ねえって、

 ほら、

 ひとつの声で招んでいる、、

 あたしは黙って風に吹かれている、、

 あたしは複数の、、

 からだのほうという音、、

 からだから泡の立つ音、

 きこえる、きこえる、、

 

 ねえ、あなた囲う、

 囲う囲う、

 わたし、囲う、、

 うん、

 あなたがまっすぐに垂れてくる、、

 あたしの手のなかに、

 生まれざるを得ないものたちで、

 構成されている、

 時間たちのよぶこえ、、

 あたしから漏れることは、、

 どこにも増え、

 どこにも瞬間、、

 あたしはやすらぐことのない、、

 はてのない、

 水のなかに来て、、

 今あなたを容れる、、

 今あなたをかごのなかに入れる、、

 今はてのない、

 海のなかへ容れる、、

 からだちょうだい、

 こちら、こちら、、

 ただはれてあおくなるヒに向けて、

 あなたの、

 肌をちょうだいよ、、

 

 まいどまいど、、

 からだにいくつかの電気と、

 骨に新しい響き、、

 あたしは生きているものを折り、

 折った場所から出るものを、

 順に順に呼吸する、

 あたりまえの土や砂と、、

 一緒になりました、、

 一緒に帰って寝ていました、、

 かえってねていたら、、

 なんだか風景が、

 次々に膨らんできて、

 あたしを包んでは遊びました・・・

<2942>「『折坂悠太 ツアー2024 あいず』」

 4月26日の最終公演に向かう。

 

 全く緊張などしていないと思っていた。

 

 会場を目にすると、足に上手く力が入らなくなった。

 

 甘いものを食べよう。コンビニでもちのスイーツを。

 

 何とかなりそう。物販で、

『あなたは私と話した事があるだろうか』

『薮IN』

を購入。

 

 ドリンクチケットを買う。

 

 水、お茶、ハイネケンならすぐにご用意できますとのこと。

 

 普通なら水にするところ、ハイネケンにした。

 

 私は緊張していたから。

 

 始まる前にいくらか飲み、大分リラックス(お酒ってこういうふうに飲むのか)。

 

 

 ライブが始まる。

 ライブ後セトリを軽く探したが、今回はなんかやめようと思った。

 思い出すままに、思い出せるだけ。

 

 道がある。あけぼのがある。針の穴がある。

 茜はなかった。光はなかった。

 

 さびしさをきけた。

 さびしさを生で聴けるということ。

 

 この人のこの文章は俺にしか分からないと思わせたらそれはその作家が一流ということなんだ、ときいた。

 

 さびしさは、私を歌っているとしか思えない。

 おそらく、そう思っている人はいくらもいるはず。

 

 鶫がある。抱擁がある。人人。

 

 私が歌っていることは、皆が知ってるよ、としか思わないことばかりだと、折坂さん。

 

 あの頃は、あってないようなものさ、とあけぼの。

 

 夢はうかうかしてると夢は叶うからと人人。

 

 これは私の歌か。

 

 人人を、ライブ後すごく好きになったなあ。何回も聴いている。

 

 あの人、歌ってる。

 

 新しいアルバム『呪文』が出る。

 リリースのツアーもある。

 

 私は発売日などのことはすぐに忘れると折坂さん。

 

 新しいアルバムが出る。

 それを、ライブの終盤で聞くという何とも贅沢な。

 贅沢な数文字の流れる時間。

 

 こういう時間に、生きているとたまに出会うということのものすごさ。

<2941>「あたしはうつる、付き合おう」

 からだから言われたのね、、

 お前にはここの道だって、

 あたし、

 そんなことないわよと、

 ひとつひとつ応えていったけど、、

 どうやら、

 それもそうだけとは言えないみたいで、、

 いつもの回転や、

 あたしの仕草が、、

 不思議にここへかえる、、

 

 あたりまえにあった場所に、

 あたりまえに戻れなくなる、、

 私は、

 時間の回転だけを残して、

 ここにいる、、

 ここから先へ行く、、

 ここから四方へ行く、

 あたしは日の辺りを確かめる、、

 からだがくる、

 からだが先に行く、、

 あたしはうつる、、

 もののひそかな声のまえで、

 あたしはうごく、、

 うごく身体、

 うごく身体が、、

 あたしにはひとつの音だから、

 あいだで見た景色は、

 そうか、

 私はあそこに一年半以上行っていない、

 生活の場所だったはずのところで、

 あたしはどこ、、

 からだはどこ、

 私は自己を管理しているのではない、、

 何かが上手くなった訳でもない、

 付き合おう、

 何とも、

 過去であろうが、

 現在であろうが、

 未来、はちょっと分からないけども、

 付き合おうと、

 決めるとこからからだは出来た、

 

 からだは出来たばかり、

 あなたのようなところへ、

 からだは、

 生まれたばかりなのだもの、、

 あたしは、

 次第にひらいていく、

 次第に呼吸を深くしていく、、

 あたしの歩のはじめ、

 からだのはじめに、、

 まともな声を出し、、

 しぜんからはじまる、、

 このかたちを意識した、、

 意識したものは次々に生まれる・・・

<2940>「やさしい歌じゃないか、ねえ、」

 通る人々の声があった、、

 私にはホールがあった、、

 受けいれていく器、

 あなたには振動があった、

 あなたには声があった、、

 よくきこえている、、

 生命のために、

 あなたは振るえている、、

 あなたはこちらに存在の全てを渡している、、

 存在の下方から、

 こちらに声を振ってくる、、

 あたしは手で掴む、

 (あたしはビールを飲む)、、

 その場にいたこと、

 その場で振動粒の、

 ひとつやふたつを持ち帰ったこと、、

 

 私はどこに住み、

 何の仕事をして、、

 どうやって生きているか、

 一瞬分からなくなる、

 そんな空間に出ていたようですよ、、

 あなたの姿が、

 はっきりとここへ出てくる、、

 そんな場所にいたようなんですよ、、

 あたしは震えていた、、

 思いのいくらかが、

 自然にここらへんに流れてしまって、、

 あたしは新しい、、

 からだの膜を欲する、、

 やさしい時間、

 やさしい歌だったじゃないか、

 ねえ、、

 あなたの温度は、

 私には懐かしい、、

 しらない旅行先の、

 風のなかに私の気体と、

 液体を混ぜていく、、

 それで粒になり、

 それをいくらかなんのきなしに吸う人がいて、

 誰だかしらない人として、

 私を夢に見る、、

 

 私は夢に見られ、、

 いくらか身体の先に浮かんだあと、、

 あたしは相当数の存在に、

 いくらもまぎれていく、

 いくらもはじまっていく、、

 私はつとめ、、

 からだのなかにひとつひとつなおっていく、、

 きこえる?

 トーンが、、

 私は回転する、

 全てがリズムになる日、

 全てがリズムになる一日、、

 私は行く、、

<2939>「すみません水をください、話をきく姿勢」

 ね、

 知らない分、、

 あたしだけ、、

 あたしだけに、

 手を当てて、、

 (私は少し水を飲みます)、、

 そうすると、

 いずれ私はあなたと二人にならなければならない、

 ということだろうか、、

 そうです、

 そうだと思っていましたが、

 違うんですか、

 あなたは、

 そのつもりではないんですか、

 (すみません、お水をもう一杯ください)、、

 

 からだ水で充てる、、

 あたし目の玉まで、、

 なにか、

 汁で熱い、、

 私はどこに抱かれていたのだろうか、、

 私は透明な生き物ではないのですか、

 どこですか、

 え、

 あなたがたが静かに招んでください、、

 こちらの方へ、

 遠慮はいりませんから、

 いくつも、いくつも、、

 招んでくださいと、

 声を掛けられて、、

 あたしは存在ですか、、

 どこへでも浸透していく、

 やわらかい水でありたいと、、

 あなたは思っていましたか、、

 すみません、、

 ちょっと視線をやわらげていただいて、、

 あなたと楽しい話がしたい、、

 

 私は、

 二つが一つになると、

 いう話を、

 真剣にきかなければならなくなる瞬間を、

 本当言うといつもおそれています、、

 いちばん暗い記憶に、

 まっすぐに接続されるのじゃないかと思って、

 いつもおそれています、、

 ねえ、

 あなたちょっと、

 楽しい話はいいから、

 ちょっとそこに座って、

 真剣に、話をきいて、、

 私にはその瞬間が、

 どんな瞬間よりもこわい、、

 しかし汗をかきつつも、、

 話をきく姿勢は少しずつ作られています、

 本当に少しずつ・・・

<2938>「からだが破れる、声を迎えに来たよ」

 ねえ迎えにきたよ、

 そうか、そうか、ありがとう、、

 お前その水の、

 なかの子どもも、

 迎えに来たよ、、

 ああ、そうか、そうか、ありがとう、、

 あたしね、、

 この水のなかに入って、、

 少し飲んだの、

 そうして、

 少し吐いて、、

 またからだのなかに戻ったよ、、

 おお、そうか、、

 お前はそういうところから、、

 からだになってきたんだもんな、

 

 ねえ、

 胚胎したところから、

 全部見せてあげようか、

 ええ、、いや、いいよ、、

 いいよ、見て、、

 これ全部、

 あたしの膜なの、、

 膜から全部、

 身体からなにから、破れて、、

 全部見せてあげるね、、

 うん、

 (私は黙っていた)、、

 これが、、

 良いときの集まり、

 これが、

 悪いときの集まり、、

 ね、分かるでしょ?

 ああ、

 (私は分かった)

 (私は吐いていた)

 あんまりからだだの肌だの、

 新しいだの古いだのと、、

 あなた、あんまりそうやって、

 言わないでおいてね、、

 うん、

 これからだの包帯の、、

 なかの、

 少し赤く湿ってるところがあるでしょ、

 うん、

 ね、少し、少し覗いて、、

 

 あたしは自分の振動数だけになって、

 この場所を、

 そっくり私にきかせて、

 新しく、

 生まれるつもりのものですけれども、

 いいですか、

 声をいくつかきいてください、、

 あなたの肌を見れば分かりますよ、

 ねえ、

 声をいくつか・・・

<2937>「目覚めることはどこかに戸惑いが」

 あたしは徐々にそれ、

 人の形、

 理想とするふるまい、

 病の形、、

 それぞれの声の始まり、、

 生きている形、、

 声などいくらにも響いて、

 私は続く、

 続くことがこの日、

 この一日を、、

 私のなかに流す、、

 私は映像の人、

 映像の日時となる、、

 次から次へと、、

 まわってはよろこぶ、、

 ここの映像の人に、

 

 私には用意されたからだ、、

 私には遠く離れる願い、

 自己、、

 これは労働、、

 これは世界への集中、、

 これは僅かな態度、

 ものを迎える、、

 ものがよく染み出す、、

 ものがやや勢いよく動き出す、、

 あたしにはそれぞれの、、

 それぞれのからだのはじまりかた、、

 それぞれの時刻の動きかた、

 あたしははてをしらず、

 夢中を知らず、、

 霧のなかの匂い、

 霧のなかのなまあたたかさ、、

 あなた少し横になって、

 うん、

 しばらく横になっていた、、

 どこからともなく、

 私の生命線がこの脇腹や、

 背の辺りを通過する、、

 めざめる、、

 めざめることはどこかにとまどいが、

 

 あたしはそっとからだをなげ、、

 あなたにしか見えていないものを、

 ここで、

 ゆっくりと確かめている、、

 ゆっくりとうごける、、

 あたしにはものの領域の、

 古い皮を剥いだ辺りに始まる、、

 霧の生まれる姿を、

 まともにみている、、

 こんなものを長時間まともに見ている、、

 お前は誰だという問いも、

 当然のごとく忘れて、

 私は内部にいる、

 私はこの内部にいる・・・