<548>

 その日は、当たり前の天気だった。当たり前の天気がどんなものか分かるだろうか? 私には分からない。長らくこのままでゆき、おそらく全体を把握しえない日となることをぼんやりと考える。あの匂い、異常な暑さのなかで共に立ち昇るもの。諦め、からかい、涙目と揺らぎ、このところまだ雨という話を聞かなかった。

 ひとつの瞬きが、不透明な合図となり、このまま跳ねていくことが出来る。馬鹿げているだろうことども、のこのこ、ここへ曲がってきていいかしら? 何かしら、ここには刻まれたものがある。それに対して熱もなく、冷めていず、感情から縁遠い街なか、悲しさを、よくぞここまで全体に引き伸ばしていることと思う。

 やあ、そこを行くのは、表裏一体の笑みではないか! この顔と、この意味と、ひとつ残らずかき混ぜて、不敵な関係性から現れてあなた。慎重さが、不変の態度であればあるだけ良いとつぶやく。その格好に急ぎの夢を、見ていてほしい。ああ、ぼんやりしていてこのことを思う頃には、ゆったりとしたものがそろそろ歩みとなる。

<547>

 急なもの、穏やかに過ぎて過ぎるもの。回転のそばで渡され、また眺めおくもののそばでひとり歩くもの。呼び戻され、結構結構、交代で笑うこと。その他にはまたとない拍手、またとない期待、まるでない期待、感覚感情。今日から私には納得のいく動きが見出されることとなっております。あなや、兄弟姉妹。何故に普段の行動があちこちでポン、もひとつとばかりにポンポンと出ているのだろうかあなたは、鏡の中で急激な表情の変化とともにあれば。

 いやどうか、長くなり、また一度たりとも現れていないものに態度から何からが渡され、あれこういった種類になったのか、それは確信、いやただの感想。放棄した訳でもないそばからまた逸れてゆく。それは喜び、いやただの動き、検討させる暇もない語り。どんどん渡れどんどん渡れ。あれこの場にはまた有名無名という観念が持ち上がるのだった。何かが違うもの、そこで何かから違うのも、また良きことだそのことが順番に順々に色合いを移す。

<546>

 大体訊ねたいものは解りますその故訊ねませんから。なんだなんだ? 俺には喋り方がひとつしかないのか? そりゃ驚きだ。随分不自由な形を強いられているんじゃないかと考えていたんだが、誰もそんなこと強いられていやしなかったんだ。うわあ、今度ばかしはこの言葉の意味が、ひと掴み別の言葉で説明されようとしているんだそうだ。大体が、別の言葉になってしまったらそれでは仕方がないと思いませんか? いやそんなこともないのだろうが、

「ねえこの言葉ってどういう意味?」

となるとこれはドギマギドギマギするよりどうも方法はないだろう。痛いとか心地良いとかの身体的な感覚から離れてしまったものの羅列を可能にしたのはこの言葉の言い換え、別の言葉による説明だったのだ。しかしどうも読みにくい読みにくいぞ何せ対応する身体がないのだから私はどこへ掴まっていたらいいのだろうそれ以外の言葉を可能にしてしまってもいいだろうが。

<545>

 とうとうさよなら、さよならなんという音が出た。俺が聞いていたのはこんな音ではない。聞かれていたのなら仕方ない手に手をとって、とっておきの挨拶を表現してみようではないか。内緒話、それから一切のズレ。たくましい季節になった。ほら、夜を取れ。それはお前のものだ。なんどでも言う、それはお前のものなんだ。

 日常何気ない言葉を交わすことでひたひたと身にせまるものその後ろで私は柔らかさと踊りとであろうそれを戦わそう。

「何故なら、君はとうとうさよならが分からなくなったからなんだ・・・」

執拗だ。その、指の動きは執拗だ。もっともらしい理由を見つけては笑い、見つけては揺れ、ほんの少しの間、これはためらいとなる。

「そう、このままで、ためらいになる・・・」

 訊ねるもの、こと、色、無視、袖、幹、揺れ、しみじみと混ざり合い、縦、お前が見過ごすものなら何でも、そら、そら、そら。

 どうか、これは、私と一になり、また呼吸に似合っていくのかどうか。似かよったものどもと当然の交わりまた叫び、忌ま忌ましいものはここで。

「ねえ? ね? ほら、さよならしなさいちゃんと、バイバイってしなさい・・・」

それから私は場所を譲る。その意味というより、響きを考えながら響きだけを考えながら。

 そんなことから分かっていくのだろうか。眠たげな幼少時はそんな顔をしている。特に、いろいろのことなど、まるで一切が、手を振りそびれているようだ。そういうことならば、ならば何だろう?

<544>

 ひきずり過ぎるものその名を緊張と呼ぶ。これは誰に対してのこわばり、何に対してのためらい。ひとつの身体に戻ってくる水分また水分と、手を交わし状態変化状態変化その影響諸に。目出度くもこの足また足。呼び戻されてそこ、呼び戻されてまた。土産話のひとつやふたつが空中を飛び交い、空間はここへ集まり吐く息がここで。

 ス――っと始まるパッと終わる。おやおやこれだけ渡したのだから望むものから望まれるものへ、トコトコパタパタまだこれを夢にすると決めた訳じゃない。情け深さも決して出番を飛ばされた訳じゃないならまだここでのことをひとつ残らず見ていたらいいと思う。それはこの私だけの考えではない。ほら、両の手をだらり、そうだらり、出来るだけだらりとたらしたらほら、この場所が見えた。

<543>

 私にはどれもが興奮に見えている。また、それ以外の条件はいらないようにも。道は、いくつか用意されていた。あくまで一応のことであり、絶対ではない。その時間に、しなければいけないこともないので、この、目の前に広がるものが大きな点であると言わんばかりの見方をした。何かがポコポコと音を立てているのだと思ったが、上手く関係してくるだけの雰囲気がそこここにあった。

 やあやあ、この波がおさまって、また謎めいて平穏などというものに移るが、退屈さは分かりにくく、興奮は、分かりやすかった。何故これだけの動きがそれぞれに放棄を行っているのか。おそらくその理由がひとつひとつ示されたところで、それでは何も分かったことにはならないだろう。次第に、風に吹かれたままの状態が心地良くなってくる。これはつまり、そのままズルズルと動いたというところだろうか?

<542>

 何げにホテル。誰も彼もがサラサラ訪れ、こんな奴らは一切合切招待だ。さあ入った入った。ぼくはこれから外に用事があるので、何、これ以上大事な用事があるってえのかい? いや、大事な用事があったりなかったりすることと関係なく、私には等しく外出というものが必要になるのさ! 何だそりゃ、誰の話だ。誰だって良いだろう。だからここで休んでくれいよく飲んでくれい。

「飲んでくれいったって水しかないじゃないのかい?」

水以外に何が要る。どんなものも水さ。あら、そら分離じゃありませんのまあどうしましたそんなに凝り固まって適当に転ぶなり曲がるなりしたらいかがですのオホホホホ。一度これを舐めてみたかったのですよあらそんな格好もまた約束された動きですこと何です今日ですか今日なら招待されたとかなんだとかで外出していることと思いますけどホテル? そう宿屋。