<779>

 汚してはならぬ場所に囲まれて、わたしは、記憶を使って息をする。喉にただ、頑固さと、走り回った映像がうつり、それを、幾度となく通している。

 影には影の、例えば、問い、があった。あきらかにしてしまえば終わりも何もなくなるのではないかと。まして、鮮やかなまとまりをもうひどいくらいに呼吸してしまえば・・・。感触のないものはもう沢山だ。

 あたしの、所作の、所作の、そのまた向こうへ。かくまわれたの、あとで、気にして。もの凄い流れへちょうど一口の汚れを放り投げてすうとした気持ちで立っているあの時間。あの時間から、おそらく抜け出したことに気のつかず、座っている人々と混じりホはどこへか向く。かき出せるのならかき出してしまいたい・・・。小さな穴のなかで誰がもがき出ようとしていてわたしの指の一回一回はそれを押しとどめているのかうながすのか。時々ぼうとした頭へ当たり前の響きを送る。

<778>

 えぐれを読め。えぐれを意識せよ。えぐれを意識すると、ただめくれていく一枚々々の私のことを思える。嬉しい匂い。過去にここまで見えてしまったことがあるのだろうか。無の構えでどこまでも吸い上げていこうとする響きを感ずる。お互いの腹の中より大きな音の流れる場所を知らない。

 いつも簡単にみずみずしい肉を隠してしまう延々の薄い輝き。ただ、止まるとは考えてもみないもの。対して、止まり、ズレていかざるをえないもの、ズレ続けるもの。あとはこのまま転がせばいい。どこで? 何のために甘味を確かめるのか分かってもいないところで。

 こぼれてゆく正当なら明らかに私が撫でよう。何故かボロボロなのだがつるんと覆えるだけ覆ってしまう。昔へ向かう、いや、こちら内部で、昔を死なせたままで持っている。これは目を持っていない。ゆえに方向もなく外へ出て新しくさわがしさと出合う。

 

<777>

 ああ、そうだろ。当たり前だろ。一致していないんだ。誰だよバラバラに喋るんだろ。

 夜、よぎってはならぬものとともに、極めて自然に言葉を転がす。ところがその、柔らかい顔のなかには、未知の、それ自体爆発しか期していない、混乱した匂いがあった。ひとつ進める。ところどころ僅かずつずれて遥か遠くまで伝わる。すると、私には聞いていないものまで先に聞こえていた。いやあえて聞こえていなかったとしても良し、と考える。それで、対応には何の問題もなかった。無理に抑えられている箇所があり、何の為かは分からない。

「思うに、誰も分からないからこそ、ここで抑えられているのじゃないか・・・」

納得か、否か。それではちょうど表情にはならないのだよと、まさか涼しい顔の上に厚ぼったい行方や風となってまたがる。

 くちのハ、それも、含んでいて、暗闇のなかから断片として不安の様を浮き上がらす。おい、そのお前の角度、時々訪ねるもの、情けにならず響く声、いや、音と判断してよいか。苦しく揺れ、あくまでも人ひとりの視線を捉えるもの、捉え続けるもの。わたせわたせばいい・・・。俺は初めて二人に増えたいと願う。ここでは言葉が狭い。あちこちにぶつかる、と考えて心は、小さな染みをぽつ、ぽつと壁につけ続けてゆく。染みの上で緊張に触れる。届いている。そのそば、私のそば・・・。

<776>

 ここからまた、申し出は申し出で小さくなる。顔を覗かす。故と言われているが、どうだ。どうにでもならざるを得ない。特別な物事のようで後は綺麗だ。割れていく。どうであれ割れてゆく。苦しげで、物音と。

 さがるばかりのなか、思い出したところで拾う。俺は拾う。肉眼では足りなくなってくる。ぼかしているところばかりで俺は後ろにさがらなければならないのだ。したら笑顔。いつ見ても突然で、複雑な動きは少しずつふるえを交換している。

 今告げたろ。それは正しくはない。ただの間違いでもない。でも渡さなければならんのです。どうやら大きく回したり、細かないちいちの機微になるように、ただの音でも出さなならんのです、と。意識は嘘と一緒に眠っていても、ただでは帰らない。

<775>

 もう一枚内側で、空気に触れていると思えた。独自の香り。収まるところへ、上手く収まっていないという考え、むしろよく動く。唇にやぼったく淀みが、挟まって押したり引いたり、あまり力も入っていないようで、どこへでもパアーッとひらけていかないか、などと、間を縫っていちいち漏れている。

 ただでさえまとまらない。ぐいとひとつの場所へまとめる必要というものを、考慮しているか否か。

「こちらか、あちらか、どうなんだ!?」

そんなやり方では無理なんですよ分かりやすいけれども。どこでひらいたらいいか分からないものをひとつひとつ、それもごちゃまぜになりながら抱えているんですよ、と、ここにとりあえず放る。

 行方を見ているうちのひとり、私。何から何まで話してしまおうと思うとき、1ミリ、それから無言。ただでさえ、まどろむ場所。果たしてこの光景は永遠に夢と別れている。現実はじゅくじゅく濡れている。

<774>

 広場の隅の隅のなんでもないところへ小さな渦を残してきた。一言一言を置いていく様は誰が見ても可愛かった。一心に巡ることで始まりと終わりを分からなくする。誰かの番などここでは考えられなかった。

 そこでいいのと訊かれる前も、後も、残された場所から動くことなく、ただ、あとをつけたばかりのところでも構わずに滑って消していった。企みの一切は用意されなかったが、用意されたとて、私は回転であると告げればそれで済むことだった。

 むやみやたらに明るく照る。ひのしたの輝き。巻き込んでわずかばかり音を立てると、周りの色と見比べていくらか微笑みまたかげるとも良い。それだけの話をいちどきにくれた。残してきて良かったと気がついたときに言う。

<773>

 あなたの言っていることが分かれば分かるほど、隠すものが増えてゆく。これは無用か、あれも無用だ。むろん、考えているほどのことはない。別れながらもまたひとつところに留まる。何かに対して急いでいる。

 ここに長い時間倒れている。土に埋もれている。あるいは、腕に沿ってのびて、順調な枝をつくり、吸いたいものはひきりなしに吸っていると、ところどころに出口が見えているのだ。彼か。まとめて浴びたらいい。

 大きな声で、それから、同じ音を繰り返す。どこまでが空間で、何を選んでベロベロと舐めたらいいか。巨大に違いないものが、私と同じような困惑を示している。何故って泣いているからだ。思ったより短いものがちらちら視界の中で暴れている。