<1075>「濡れる葉」

 なま、けたましい、

 なま、 ぬら ぬら ぬ け、けたましい

 過ぎ

 落ち葉、 さかさまに乱る、ノ、よ、

 探り そっと、そっと蕩尽、

 触れて

 かきくしゃ(に)かきくしゃ(に)なる、

 よるやく、明きはじめ、

 ひとことのこのこと

 さぶしう さぶしう あからめにひゅうぞ、

 ひゅうひゅうぞ、 ぞ、 ひゅうひゅうぞ

 する、

 われじみてこ

 ゆく、ゆく、みてこ、

 ことはどい、ことはどい、よい、あからめぞ、

 めぞ光、差しい、差しい、

 あくるまじ、とるまんじ、さまじ、

 やすやすとも、やすやすとも、

 はじき、あがり、けむり

 さ

 ゆるやく ゆるゆるめく ぞ しぶい

 などのどのさに、

 おのじあてこ

 あてもてさきに見て、見て、見て

<1074>「けたいと、液」

 もとは 色

 もと もと

 もと暗い、 ほの、ほの、ほの、

 あか、るい、よう、よう、よく見てて、

 うち、うち、そと、

 その

 明かり、より、過去、文字、

 けたい、けたい、けたいなひと、ひと、ふで、

 ひと、液、たらし、ひと、たらし、、

 なまの、なまの、なまの、あたたかい

 ひと、そと、うち、あと、まだ、

 軽い 軽い 軽い

 そいじゃ、あ、そいじゃ、あ

 混ぜ 混ぜ 混ぜ 乾

 ぱり、ぱりぱり、ふき、

 ちり、ちり、ちり、

 よし、

 よし、よし、よィ、

 並んで、並んで 取る 塗る 笑む はじく

 遊ぶ

 過去から順にかわいてく 塗ってく

 しみる しみる とどまっている

 ながす 汗と 訳(わけ)と 肩 腰 膝 さわやかさ

 まぎる さそう ひらく まぶす さわる 少し 照れる

<1073>「完璧な一日」

 完璧な演技で全てをすっかり騙してしまって、

 さて部屋に戻り(お湯を沸かして、コーヒーを飲みながら)、

 テレビをつけ、野球を見、

 イニング間の弛緩期に、

 ゆっくりとほくそ笑むのだろうか、、

 (一点取られた)

 いいや、ひどくどんよりとするだろうと思う

 全部が思った通りでひどく残念だった、真っ暗だったと、、

 それでまた、適当にトレーニングなんかをして、

 やけにぼやぼや、そしてべたべたするなと思いながら、

 (あ、一点取った一点取った)

 その場になんの表情も浮かべずに寝そべっていようと思う、ひとりのひとがいるはずではある

 あるが、、

 さて結果は流れ、おそらくは快挙であるはずの一日から脱け出ることが出来ない

 疲れもなく倦怠もないがこの椅子からは動きたくない、

 (誰に勝ちがつくんだ・・・?)

 昨日は美術館にいって、ただ見ているだけだった、

 (そうか、あのとき一点入ったから・・・)

 もう少し早く出ればよかった

<1072>「現代人宣言の」

 現代人宣言の一

 

 渦中の人であること

 なにがあっているのか間違っているのか分からない、という態度を保つこと

 手探りで進むこと

 手探りで進みつつこたえのようなものを見つけても、それが本当にこたえなのかどうか、とすぐに不安になること

 俺は最初っから分かっていたんだよね、という視点、態度を持たないこと

 ついつい困ってしまうこと

 惑うこと

 今をふかんで見ないこと

 からまること

 積極的に見失うこと

 消極的にも見失うこと

 いちいち感激屋であること

 ぼーっとしていること

 おそれて尻込みすること

 尻込みしつつ進むこと

 一体全体これはなになのかという気分を持ってときに平気でなくなること

 朝 目覚めてみること

 今日のためにまずは朝目覚めてみること

 醒めていること

 醒めた目に感激の色を少し差してみること

 迷うこと 

 失うこと

 巻き込まれてどうしようもなくなること

 よく食べて泣き笑うこと

 決してなになのか分からないこと

<1071>「キョウ」

 出来上がることに驚き、、

 出来上がることが続くのに驚き、、

 ただ続くのに驚き、、

 道に驚き、触れてもなんの感触もないだけで、

 ためらわず驚き、

 あたりまえの言葉にときに驚かなくなり、、

 驚かなくなることにも当然驚き、

 驚き続け、

 驚き、驚くにつけて夜(よ)も明かし、

 晴れ晴れとしたヒにひとりで立って居(イ)、

 なめらかになり、、

 やっているという感触もなくなり、、

 ただ底の方に穏やかな、驚きの感覚をよこたえ

 それが長く続き、

 空洞になり、音(おと)がよく響くようになり、

 どこへもゆけ、どこからも帰ってこれるようになり、

 訪ねる場所、訪ねる場所ごと、

 風は、 また風は、 風はまた風は、、

 道に舞って、舞って、舞って、、

 その不意をつく声に驚き、

 振り返り、再訪し、

 よどみ、立ち上がり、ひらき、流れ、

 軽くなり やわくなり

 ふとした拍子にはじめてのところへ戻っている、、

 微妙に異なる・・・

<1070>「現代人は醒める、さようなら」

 遅くなるもの 遅れるもの、

 ふとした隙間に、どうしようもなく現代人で

 現代人で醒めていて

 どこかに感激屋を隠し、

 あの倦怠のなかにすむ

 どうしようもない現代人で

 だからかして書いている

 どうしようもなく書いている

 一切が羅列 一切が羅列で

 そこへ集合し 乾燥し 黒くぼかし、、

 あきらかに無名をあらはすために、、

 どこまでもどこまでも完璧な現代人なんだ、

 そのなんのきない道、なんのきない通りで、、

 小さな部屋 小さな部屋にからだをつけて、

 かわいた指を見つめている、、

 過去から 隙間から窓のそばから漏れ聞こえてくるものの全てで、

 その時間はわたしで、、

 明くる朝にまだ騒いでいて、

 感情を通さず、、ふっ、ふ、と呼吸する、、

 さよなら現代人、、

 またあの隙間から顔を覗かせるだろうから、

 醒めているということにあたらしさはいらないから、

 さようなら現代人、、

 なにかを削っているという意識もなく削っていき、

 集まった柔らかいくずの匂いによく似た現代人

<1069>「名前と恥じらいがない」

 恥じらい

 名乗るほどのことではなく、、

 恥じらうので、、名乗るものがなく

 名前もなく、

 歌もない それから大声も、

 余分な倦怠もなく

 さわやかさもない

 過ぎていない 過ぎていない

 わたしはここにいるだなどと思うことがない

 ふるえていない

 巧みさがない はだかでもない

 誰彼構わず否定すればいいというわけではない

 朝がない 夕(ゆう)もない

 まるで ぼんやりとした疑義が、

 疑義とぼんやりとした気持ちがあり、

 わたしには人生などと大きく出られても分からないところがあり、

 喉が痛く 外は暑い

 まだなにかしらは残っているというイメージの仕方もなく、

 日毎に新しくなってゆくとも思えない、

 少しだけ新聞を読んでいる、

 少しだけ新聞を読んだあとにコーヒーをのんでいる、

 実は牛乳がないのでコーヒーをのんでいない、

 喉が痛いので少しばかり驚いている、、

 眠りが必要でもないのに寝てしまいたいと思っている、

 不貞腐れるようにすればよく寝られる

 ゆうべはぐっすり? ね? ね? いかかでござあましょ、

 とか、、

 そんなことなどはしらない、、

 自分が恥ずかしくないのか、という言葉がよく分からない、、

 わたしは恥ずかしい状態を経たことはある、それを思い出すこともある、

 しかし自分が恥ずかしいというのは一体なにだ?

 一番恥ずかしいこととはなにだ?

 よく分からない、、ひとの動きそのどれもが恥ずかしいのだから、、

 恥ずかしいものがなくなったら味もなにもないのだから、、

 無味乾燥なのだから、、

 乾燥すれば喉が痛いのだから、、

 わたしは恥ずかしくないことよりも喉が痛くないことを好む、、

 そして家に牛乳のストックがあることを好む

 好ましい香りのコーヒーを好む

 新聞を少しだけのぞいてみる、、

 はれんちが灰色でごまかされている、、

 すけべなページの方がよっぽど清々しいではないか、

 ビッカビカのカラーページに、、

 すけべが詰め込まれているページの方が、、

 そうするとしかしコーヒーはのまない、むろんお茶もにあわない、

 ビールか? ビールは炭酸だから嫌いだ、

 安もののオレンジジュースとか、、

 つぶつぶのオレンジピールの入ったオレンジジュース、バカでかい缶のやつを飲みたい