<1201>「誰かの同じ呼吸を」

 どうしたって、この呼気のなかに、

 当たり前の感慨が含まれていると思えるのですから、、

 そうして陽の前に姿を見していました、、

 そうしてそんなに見えるだけでなるほど一粒一粒がおもむろに動き出だすのをひとりでつかまえているのです、

 私は尋常な姿で応えていました、

 

 途中で、あなたがそっと、輝く日の辺りに手を置いたかと思うと、

 そのまま小さな記憶をそこへ残してゆきました。

 その小さなものはちょうど火のように明るく光り、

 もう目の前にはそれしかないみたいですから、

 それははしゃいでいました。

 私の中で小さなイメージは全体的に駆けているのです、

 それは速いです。

 当たり前のことが起こる場面に遭遇して私はなんとも言いがたい気持ちになっていました。

 けしてこれは同じ日の出来事ではないのですが、

 けしてただ美しいだけであるとは思えないのですが、

 この少しの間は、真っすぐに立っていたい気持ちになるのでした。

 

 分かたった先に今一度べらぼうな行いを見ましょう。

 こういうものはただに迎えるほかはないのですから、

 そこにある別様の日が現れて、

 なにやかや全て、ぎらぎらするもののなかに取り込まれてゆき、

 私もその流れに押されるままなのでしたが、

 このものに正確に乗っている訳ではない、

 私ただひとりは逸れたままだ、

 とついそんなことを考え、

 しかしこれは当然ほかの人の思いでもあるだろうことをおもいました。

 

 晴れの日に、

 明らかにきらめいています。

 それはただ静かな嬉しい日です、

 この輝きになるならば、

 個的な考えを推し進めたまま、

 やがて当たり前の位置へ立っていることだろうと、まあ確かにそんな気もするようです。

 

 いったい仮の姿とは何でしょう、

 私は瞬間々々ごと、各々のぼんやりした感慨が点いては消えている光景をただじっと眺めていました。

 あまりそれは難しいような、

 考えているとたちまちどこかへ散ってしまうようなものに思えましたが、

 誰ぞ同じことを考えていやしないか、

 そうしたらば印をここに置いてはみないか、

 と、

 平生とはやや違うゆき方をしてみていたりもするのです、

 私が着ているものはなにか、

 感慨をおもむろに放り込むような性質のもので、

 ちょっと呼吸を確かめてみたりもしますけれど、

 なにせ尋常の日ですから、

 特に、これからは聴いていようと思うのです、

 ああ今、

 ここらへんに静かに点くのを見たような気持ちがします。

<1200>「あれは裸」

 あれは裸になっている、

 どこへもその真新しさが見えているので、

 普通の日の出来事が明らかに見えているので、

 あれは、少々、裸になっている、

 なんだかとてつもない

 これはただの裸じゃないか、という感じがする、

 尋常当たり前でしょうが、

 あれはただの裸でしょうが、

 

 裸が現れると、

 もう記憶というようなものは取れて、

 ぽかんと、

 まあ言葉をほっていた、

 これはしかし秘密というようなものはありはせんのだろうな、

 どうしてもそれで不思議な気がいたして来ます、

 身体にだんだんと波が伝わって来ましたので、、

 私も同時に裸であることにいたします。

 何ら不明なことはないのですから、

 どこか、不明のところあったればおっしゃってください、

 お前のその長い、、飽くことのない視線を寄せるのは何ですか、

 何にも秘密がないのでずっと見てしまうところがありはしませんか、、

 

 ひょい、ひょい、

 ひょい、

 と、

 当たり前に触れて、

 かなり熱にうたれてしまったと思います。

 だんだんとその姿が実際になってきます。

 あれはしかし裸でしょう、

 まるでどこにひらいていたらいいかが分かりませんが、

 あれは確かに裸です、

 

 当然と、

 当然裸だと、

 あれあたしね、どこか奥の奥の方へあるんじゃないですよ、

 そんな仕方はありません、

 そんなものは知らない。

 この袋みたいになったもの、

 全部そうなんです、

 だから何の仕掛けもないんです、

 そうすると、かえって分からないんですがね、

 かえって何も分からないんですがね、

 

 これはのっぺらぼうですか、

 ただの途方もない現れだと感じられます、

 もうはぐものがないんですから、

 静かに底へ投げ出されていたらどう、

 静かに移っていたらどうなの。

 まだ、そんな顔をしていて、

 いやだなあ、

 こんなにあからさまでなくてもよいのに、

 こんなにどこへも現れていなくてよいのに、

 ただ訳も分からずに、

 この日はずっと裸なんだな、そうなんだ、

<1199>「新しい人は照れる」

 冷たい水がかかり、

 ひとりで動揺していました・・・。

 えらく、えらく、遠いところの、

 不意の勢いが、

 いつまでも無垢の表情で見つめていましたから、

 静かにあたっていました、、

 このまま静かに・・・。

 第一声は物事の突発的なのを言い、

 明らかに速く駆けています、

 流れが続いてくると、

 これは細い音をさした、長い長い静止なのではないか、と、思う程です。

 この響きを聞き、静かに身を預けたままでいるうち、

 いつもの感じが起こり、

 ああ、こんなところは忘れた、

 と、ひとりで長く思うのでした。

 

 全く不案内のところに出、

 辺りに声をかけているままに、

 ふらっと浮かび、

 もう同じ身体を覚えることはない、

 と、なにやら後ろの方で、はっきり思うものがいて、

 強い印象を預けた日ではないけれども、

 あるまとまりから、

 なんだか‐だかの入れ換えを遂げた、、

 それで、誰か新しい人が、

 新しいという実感もないままに、

 ただ波を受けて、

 そこに立っているのでした。

 そこに立っているのはかつてと流れる音を異にしていました。

 

 そうして、きゅっ、きゅっ、

 きゅっ、

 と、ひとりで閉める音をさして、

 ちょうどその、空白を、

 呼び止めてここにひとつ流れを交わすのでした。

 遠方からのリズムは途切れ、

 全き身体の問題になって、すみやかに行きました。

 これはまた後ろの方に下がって静かに音をさして、眠るんです、

 あれからどんどんと湧き、溢れることで、

 隙間に絶えず話しかけているのでした、

 

 何だか、新しい人は照れていました。

 全く素直に照れていましたから、

 だって、まだわたしはここへ出たばっかりであるのに、

 もう随分と長い時間も前から、

 当たり前の目に見つめられていたんですから、

 すっかり見られていたんですから。

 そうして、沢山の感じを受けて、

 巧みに溢れていました。

 語らいたそうに、

 あなたは絶え間ない運動であるために、

 小さな隙間を、ひょんなことから見つけたのでした。

 それは新しい人を迎えるための、何か驚いた静止のようなところで、順当にここへ触れることができ、良かったのです。

<1198>「男は燃える」

 当たり前のようにそれは踊る一日のなかにあり、

 男は燃えていて、

 瞬間のなかに何度もひらめくのが勿体ないぐらいではあった、

 こうして一日は作られていた、、

 語らいの中心にステップが次々と現れる、

 明らかにされうることはなにひとつなくただぼんやりと明るく揺れる方角を眺めている、

 男は考え事をしているようでもあり、退屈を、これよりこれよりずっと煮詰めて濃くしてゆけばもうさすがに身振りとなるより仕方なかろうというところまで来るのだと、

 優しい顔をしているようだと思ったが、

 愉快な服装の中にあると思ったが、

 陰には何度も新しい呼吸が映っていた、

 

 ぼくは回る、

 ぼくは回る、

 当たり前のように接触しながら、

 きっと こんなに運ばれて、

 あんまり退屈が美しくなりながら、

 あちこちへ跳ぶ、

 時間とともにどこかへ駆けていて、

 回る、

 回る、

 跳ねた日のなかへ僅かに新しい姿を見せて参加している、

 頻繁になる、、

 

 きっとこれも尋常そうだ、、

 きっとこれも何かに似ていなくはない、

 僅かに動揺を見せたまま踊っている、、

 これは西方なのか、

 これは送られた一日なのだろうか、

 放埓、放埓、歓喜の先なのだろうか、

 今や手探りをしながら方々から出てくる、

 ざわざわとしながら一日に集まっている、、

 これからのことをよく目にしていたいと思って、

 私に充分なだけ、別々の踊りが生えていることを願って、

 

 あのカドを向けて一斉に行きだした、

 どやどやとした、

 そわそわとした、、

 それでこのなかにあるひとつの印象が燃えていた、

 印象が燃えていた、

 誰もそのことは口に出さなかったが、

 確かにそれはいつもよりよく見えた、

 あのカドを曲がるとぼんやりとした動きが見える、

 川が流れている、

 期待した方向に期待した姿で流れている、

 歩行の隙間にこんなものが溢れていた、

 こんなものが転がっていると知った、

 もぐもぐとした、

 平らな道の上で、

 やはり手を開き、

 やはり小さな粒の上で踊っている、

 新しくほうけてこの眺めを思い、

 われを忘れて、

 いてみることにした、

<1197>「実のなかへ潜り」

 かわいたそぶりを見していたのだ、

 誰が頷いている?

 全然運動でなくって、、

 あとになにか焦げ臭いものが残っていた、

 ひろうかもしれない、

 ひょっとしてそれは指についたままになっているのかもしれない、

 あのとき時間に引いた線が適当にぼやけ、

 緩やかな燃焼の身振り、、

 なんておそろしい華やかさだろう、

 静かだろう、、

 

 同じ形をいくらか保っていることによって、

 同じ運動をいくらかオコナってみることによって、、

 ばったりと出会うのだけれども、

 お互いは違うものを見ているのだな、

 それで、何を共有しているのかは分からず、

 じねん、照れている時間がある、

 じねんにあなたは現れてくる、

 

 順当に振舞いを見ているとき、

 声を継ぐとき、

 本当はこのまま沈黙を持っていればいいと思うのだが、

 何か掛けていたいような、

 全く無邪気なので自分でも なるほど驚くような空間の過ごし方だった、

 あんまり小さな言葉ではいけないと思うようなときに、

 あるあたたかさが流れてくる、、

 そうしたらしばらくそこへ、しまうも取り出だすのも忘れて茫漠と浮かんでいたらいい、

 

 やがて実となり、

 揺れる香りを放ち始めたときに、

 私なんかはそれを静かに見つめてしまう方だけれども、

 とてものことで指は待てないのだと思う、

 そこへ混入した線はいつまでも実のなかを行ったり来たりしているようだけれども、

 どうですか甘いですか、

 さてどうしてこんな大胆な身振りを持っているだろうか、

 私はただ余計な身振りを閉じていて、

 まるで夢中だけれども、

 その行いから徐々にほどけていくものがあり、

 気がつくと速やかに線を消していたりやなにかした、

 水が垂れる、

 垂れるにまかせていた、

 穏やかな声が じねん滑り出しているのを、

 言葉がただ淡々と続くのを、

 不思議な意識で過ぎていた、

 

 きっとこの夜からの拡がりが、

 ほかを覆ってどんどん進むようだから、

 かなり意識をしてそれを払うように、その場にいる人々で取り組んでいたと思う、

 なんせあんまり香りが立っていたから、

 ちょっと焦って、

 速やかに線の上へ被さり、

 前のめりに笑っていたりもしたと思う。

<1196>「正確な抱擁に向けて」

 あなたの正確な眼差しが順序よく揺れている、

 ここはしばらくほうけたようになる、

 仰天する、

 鳴っている、、

 正確な抱擁に向けてもう走り出している、

 現在は呆れるほど直接的な質感であった、

 後で確かめるのに、いくらも残ら‐ず‐のを感じ、

 辺り一帯ほうけていた、

 身体が徐々に曇り、おそろしく泣いていた、

 一切響きでありますよう、

 一切自然な時間でありますように、

 

 泣き枯れてそこにある、

 からころからころと寂しい音(ね)を立てて、

 走っているのは私の過去だ、

 すぐ速さの振りをしていたものだ、、

 全くひとつひとつの動きは騒がしいものだと思ったが、

 どうか、

 身体を貼り合わせて大きな声で跳ねる、

 私が愉快であるみたいに、

 時折粒や粒が絡まって隆起するよ、

 どうだろう、、

 一斉に音(ね)を立てているのだろうか、

 だらんとした身体に涙がかかる、

 

 ここでしばらく震えていて、

 単純な運動量を映している、

 俺はとっくに吹き散った、

 だからか信じられない軽さをしている、

 記憶に対してそれに見合わない軽さを表現している、

 どうだろう、

 この辺りの時間はひんやりとしていた、

 真正面からそれを見ていた、

 何か小さい声が聞こえていた、

 

 そうしたら一度渡してくれませんか、

 きっと ほそい、ほそいものの方が良いですが、、

 何か渡すものがあればいいのですが、

 相変わらずあなたのリズムに沿って勝手に浮かんでいるような心地で、

 きっと見ていた、

 きっと見ていたと思う、、

 ありたけのものをここに置く、

 というのは少し恥ずかしいので、、

 少し微笑んでいます、

 しかしこの静かな時間のことはどう伝わったのでしょう、

 日々の手ざわりというものはどう変わったのでしょうか、

 まるで違う身振りをいくつか持っていて、

 とびとびに移動していく隙間に、

 熱で形という形もなく どろどろにとけてしまっているものに対して、

 あなたとともに指を差すでしょう、

 そうして何を見、 どこを移ろうでしょうか、

 勝手なことで、

 ひとひのなかにこんなことを放り込みましたけれども。

<1195>「無形の生活圏」

 無形の夢が 生活圏を捉えている、、

 じっと 見、

 そのまま流れてゆくものもののぴたりと止まって見えているのが生活の姿だ、

 生活に外から手が入り、

 泡立って嬉しい、、

 地球は私の生活圏のことを言うそうです、

 あんまり野望と関係がなく、

 泡立つ日々と時刻の中に、

 青い光が差すそうですよ、

 

 あなたどうしてそんなに顔が静かなんです、、

 振れて振れて振れていたら、

 こうして静かになるように出来ています、

 しかし随分湯気が出ているじゃないですか、

 あなた燃えたのですか、

 いえ、チャネルをいったりきたりするのです、

 目を開き、閉じしているままで、

 編集は熱を起こしていくのです、

 

 しかしかわいて煙になりそのままに浮かび、

 あたら新しい時刻の中にそれとなく入ってゆくのでした、

 私は嬉しいのでした、、

 時節をこえたままでゆっくりと燃えているので、

 それをじっと見ていることが出来ました、

 さいわいなのか、全く無目的の歓喜のなかなのか、

 あたしにはよく分かりませんけれども、

 身体がぼうっと浮かび出て、輪郭線が光り、

 大層な景色のなかを揺れてゆくのです、

 わたくしでない人は地球にはいないのでした、

 つまり生活圏はわたくしの周りにしかないのでした、

 それで、組み立てることは大層な歩みを意味するのです、

 それから ここは沸騰としか名付けようがないのです、

 

 よく音が立ってかわいい仕草が盛り上がり、

 天晴れて、震え、

 満足に次から次への匂いに、

 その姿に、

 指をつける、、

 あらん限りの無表情で、

 燃えている時節のそばで、

 時折傾きながら、

 眠りながら、

 わななきながら、、

 

 限りを上手く言い、

 あらかた暴れていても、

 それは外には出でず、

 かつてないほどに柔和な笑みで、、

 煙になって混じり、混じり、混じり、

 ふるえた騒ぎになっていることに生活圏のわたくしが触れるのだ、

 全く静かじゃないか、

 ぱち、ぱちと、隙間に小さな姿を見せ、

 なんだか香ばしいじゃないか、

 あれから芳しいじゃないか、、