<391>

それがある前とあった後では、何もかもが違ってしまっているのだろうという出来事を想起してみる。尤も、それだけのものだから、こちらの意向など一切お構いなし、向こうのタイミングで、好きなときに突然頭の中に訪れてくるのだ、と言った方が正確かもしれ…

<390>

ザワザワザワザワ言う声が、生滅を暗示している。いや、それは生滅そのものかもしれないが、プチプチと、盛り上がった、と思えば、次の瞬間には消えている。それは、大胆な拒否であろうか、反発であろうか、ただの快哉であればこそ、ゾワゾワと内側から立ち…

<389>

最悪の場合って、死ぬ? そりゃそうだろう。確認は取ったかって、要りませんそんなの。からかって、馬鹿にしてたら不死なのかい? とんでもない! 誰だそんな話。聞いた? 聞いた!? あなたもそうかい。大体が、不死を前提に話が進んで、不安が除かれればあ…

<388>

何かを憶えている、というのは微妙な問題だ。適当さと深さとが混在しているので、記憶力が良いか悪いかの基準を定めることが難しい。ごく限定的な条件を定めてしまえば、その条件内での結果はいまいちだが、他の領域においては抜群の記憶力を誇る人などを見…

<387>

君は、ここに立って、数百数十年の重なりを聴いている。 君は、ここに立って、数百数十年の、静かな流れを、集まりを、蓄積を、その胸に納めている。 秘められた、その言葉のために、いちどきに、数百数十年を語り出せ。タイミングなど、問題にするな。私が…

<386>

どこに戻せばいいのか、いや、何か知らないところへ持ってくるのではなかったのだ、が、状態の変化があまりにも速すぎ動きすぎ、ひとたび巻き込まれれば、なす術もない。何も出来ないところで一応のことは考えた(そこではどうにもならない)。その一応は考…

<385>

ひとつの悲鳴? そう、あっちだ! 情けなさが歩みを絡ませ、しかし加速する。全体がこの夜気の涼しさや緊張や快適や、激しい不安らで満たされて、空間と私と目的地と、その距離だけに慎重な祝福が用意される。 どこまでもどこまでも天井の見えない浮遊感の中…

<384>

こうして、表情でいて、出会うとは思っていなかったのだから、もうひとつの目を、向けたのは他でもない、誰でもない。順調な、気分とあなた、睡眠と私。変化が困難を調整し、そんなことは驚きと、浮つきと、現実感のなさとに関係する。 流れを探り出す。探り…

<383>

あいにく、それは雨であり、適当に解かれるまま、背中を駈け、ひとりの暮らしを形作る。愛し、それは港を発する。暗い視線また視線、ピタ、ピタ、ピタ・・・。それは、非常な憎らしさ。何も言わずに絡まった。集めても、集めてもまだ足らない。誰か居たのか…

<382>

実際の私であって、終わらない、空間の虚しさでもある。ちょくちょく注いで、そうだ、もう少し輪郭をハッキリさせたいと思う、そう、思おう。これは、現実の問題ではない、なら、どうして・・・。がら、がら、がらがらがらがらがらがら。大体の距離を、知ら…

<381>

秩序と無秩序を各々で慰めて、バラバラに慰めていって、後合流させる、そんなことを考えているやもしれないが、それはどうも人工的なことで(当たり前だが)、一度バラしたものの合流後、秩序も無秩序もそこに程よく混ざって存在し・・・というのは、元の自…

<380>

記述行為は無限の優越感を生んでいて、それを防げるか。どこが高等なんだ、人間が?と言うとき、人間の枠から自分だけ外しているのではないか(お前は・・・)。だんだんに無へと向かっていくもの、何かではなくなり、終わりには完全に無になってしまうのが…

<379>

招き入れ続ける為、卑怯であり得るはずもなかったが、根本以外の回答をひたすらに捨てていった。何かが残ったろうか。妙に緊張していて、そこに不快感は伴っていない。錯覚だろうか。余りがないとなると、自身はいざ知らず、見ている方は間違いなく息の詰ま…

<378>

進めないということで苦しむことはなく、どうあっても進むということに苦しさはある。調子が悪くても大丈夫だし、状況が不利でも、派手に追い込まれていても大丈夫だ。逃げ場がないというのは結局、私がどこまで行っても私であるということで、何ら取り上げ…

<377>

好みと、好みでないことがある、というのを忘れる訳ではないが、そういうものが入ると理屈が成り立たなくなるので意図的に外しておく。すると、好みか好みでないかというところに行き着いて、というより、そこにしか問題がなくなって、困るというほどでもな…

<376>

自分から、考えは、想いは、感情は、奪われていなかった。では、決断は・・・? 誰に渡している? また、どうして渡している? 理屈ではどうにでもなることが分かり、どうとでも言えることが分かり、しかし、私にも生理感覚があり、何が何でも決断を他に譲っ…

<375>

バランスは油断によって崩れるのではなかった。バランスはどうやっても崩れる。それはリズムのようなもので、常に動いているものでありながら、同一であること、堅固であることを求められる理不尽さ、矛盾具合に、バランスを崩すという事象はつきものである…

<374>

全ての私が嘘であって、どこに行っても嘘にしかならない。どういう訳か、偶然が作用してきて、良い方か悪い方なのかは分からない。言葉を強くしろ、そして態度も強く、それは確かな方策であるとさすがに認めた。ただ、それは嘘であることよりもつらいことだ…

<373>

表情は変わらない。だが違うものであるためにその変化は必要がなく、全く知らない場所を用意されてなんだかなあと進んでいくと、見たことのある景色に戻ってきた安堵もない。 安心の基礎になるものは・・・。そんなものは何もなくて、ぐるっとひと巡りしてい…

<372>

遠慮しがちに歩く道は、別段険しい訳でもなければ、優しい訳でもない。目を伏せるだけよく道の先まで見えるというものだ。誰かが問う、彼らと問う。突然お前は笑い出す。具体的に回復が図られて、大袈裟に調子が良くなれば、なあんだと思ったのだ。 ひょんな…

<371>

ある範囲内まで接近すれば、その人は必ず止まってしまうのだから、周りの人間は、その人が何もしない人なのだと考えた。また、そう考えるのが普通だったし、非協力的だと軽く不満を覚える人も少なくなかった。 何故止まってしまうのかが分からないので、他者…

<370>

一度見た景色の、大袈裟な他人でしかない。通り過ぎた窓たちの、不機嫌な掃除夫でしかない。ひどく霞んだ風景を、丁寧に払いのけることを拒絶し、強かに座り込むひとりの警戒者でしかない。 見られた経験は、風の中を移ろい、次第々々に疲れていく。内証の通…

<369>

コトコトコトコト、大層な局面までやたらに誘われていくのが愉快でないと言いたい? あそこもここも同じ部屋で、安心だけが違って映るのが滑稽だが、大丈夫だ、問題が一様になくなっていくのが見えるから。前に立つものは影となり、またそうした反応を強いる…

<368>

徒に、名前であるはずの時節。細かい動きに、囚われていたはずの過去。集合は、いつも駆け足だ。気持ちはまだない。だいいち遅れているはずの場所で、帰ると言っても良かったのだ。僕が関係でなくなるとして解散してしまえば、中心の定まらない不安を、誰彼…

<367>

眠りから醒めていくなか、遥かな昔がかすかに残った。それは、優しさ以外の何ものでもない。生まれ出る秘密を知っていたのだ。だが、もう一度知ることだって出来た。微笑みは遠い、どこまでも遠い。映された表情を、確かに見留めて、懲りない感触の私になる…

<366>

まあ寛いでいっておくれ、君の席はそこにはないのだよ。ちょうど計算した分だけの後じさり、ちょうど食べた分だけの皮肉な感想。連絡係は未だに居場所を探している。大それた経験を漏らしていくよ、どうも通り抜けていないと思うのさ。それで、少し散歩をし…

<365>

ひとつの夜が警戒であるために、夢をよく飲み込んでいる。パチパチと、弾けて見えるものたちと、昨日の私、巻き取られ、もやのかかった溜め息。 こぼしているのか捨てるのか、いずれにしろ、君のような不安感が、破れた景色ときっかけとを掴んだ。滑らかであ…

<364>

この人が伝えたいことはひとつだ。それはしかし、ひとつの言葉にはならない。ひとつのことを伝えるのにどれくらいの言葉が必要になるのか。一方で、ひとつのことを分かりかける、ということがある。ひとつのことを分かるのだから、0か1しかないのだろうと…

<363>

何もないところに意味を見る、目的を見出す、その見方、見出し方みたいなものには興味がなく、当然、何もないところに何かの意味を見出すこと自体にも興味はなく、何故、何もないところに何かを見出さないではいられないのか、というところに非常な関心があ…

<362>

僕が土台となって、曇天よりもの景色を見せよう。ここにあるものは全部が渋滞だ。押し合いへし合いしながら、優しく根本を生み出して、決して帰ることのない日々を僕に計算させるのさ。眺めるので、それで足りなければ適当に二、三の歩みを。もう少しのステ…