「元気を出して」という励まし方は危ないのでは?

 落ち込んでいる人に向かって、

「元気を出して」

と言って励ますというのは、よくありがちな場面だというように思いますが、私は、

「元気を出して」

という励まし方は、非常に危ないものだというように思います。

 何故なら、落ち込んでいて元気もないのに、無理やりに元気を出そうとして、結果的にそれが空元気に終わった場合、余計に疲れてしまうからです。

 また、元気を無理やりに出そうとして、それによって、仮に元気を出すことに成功した(空元気ではなく)としても、それはそれで、やはり良くないと思います。というのも、以前、『精神にも恒常性維持機能があるような・・・』で書いたことにも関係してくるのですが、元気な状態というのは、一見良い事ばかりのように見えて、実は物凄くストレスがかかっている状態なのではないかと思うからです。

 なので、落ち込んでいる状態から、無理やり元気な状態に持ってくるというのは、針の振れる先をただ逆に切り替えただけで、どちらにしろストレスフルな状態であることに変わりはなく、問題の解決にはなっていないんじゃないかというように思っているのです。

 では、誰かが落ち込んでいるとき、あるいは自分が落ち込んでいるとき、どう対処したら良いのかということに話は移ってくると思いますが、私は、他人であれ自分であれ、別に無理に励ます必要はないんじゃないかとおもっています。その代わりといっては何ですが、

「気分のリズムに、無理に逆らわない方が良い」

ということを他人に、あるいは自分に訴えればそれでとりあえずは良いんじゃないでしょうか。

 落ち込んでいるときは、無理にそのテンションに逆らうと余計に疲れますから、落ち込んでいる気分の只中にありながら、なかばその落ち込みをそのまま放っておけば良いんです。元気な状態と同様に、落ち込んでいる状態というのも、それなりにパワーが必要ですから、そのうちにボーっとしていると、落ち込みっぱなしではどうもいられなくなってきて、精神の方で勝手に、落ち着いた静かな状態へ戻っていってくれます。