選挙のあるときは・・・

 どうも各地で選挙が始まったり、始まりそうだったりしていて、いやに騒がしくなっている。

 騒がしいとは言っても、ある程度は仕方ないであろう。それよりも投票についてそろそろ考え出さなければいけないな。

 しかし、選挙と言えば、投票場所はいつだって地元の中学校だ。大概は日曜日が投票日だから、投票に行くたび、いつもグラウンドでは野球をやっているような気がする。

 

 「バッチコーイ」

 「ピッチャー、フォアボール勿体ないよ!」

中学生の掛け声を耳にして、何故だか私は、

「早くグラウンドに戻らなければ・・・」

という思いに駆られるのだった。むろん、戻る必要は無い。私は投票に来ているのだから。

 なのに、私はしばらくの間、自分が、あたかも試合を途中で抜け出してトイレに行き、いましがたグラウンドに戻ってきた野球少年になったかのような錯覚を覚えていた。

 むしろ、私こそ本当の野球少年で、今現実にグラウンドでプレーしている中学生達の方こそ偽物なんじゃないかとさえ思った。

 

 「いつまでトイレ行ってんだよ。なげーよ」

という声がかかる。声の先にいるのは私、ではなく、おそらくトイレから戻ってきたらしい中学生だ。

 ようやく私はグラウンドを離れて、体育館へと向かう。