大恥というのはなかなか掻けない

 もちろん、馬鹿なことをして悪目立ちをするだとか、それこそ犯罪をして目立つなどということは除外した上での話だ。

 それら、いわゆる「悪目立ち」的なものを排した上で、普通の生活のなかで、

「今日は大恥をかいてやろう。背中に一杯嫌な汗をかこう」

と思っていても、これがなかなかに難しいものなのである。大恥をかく局面というのはそうそうやってこないし、かこうと思っていればかけるものでもないのだ。

 私は今まで、

「大恥をかく」

ことは絶対に避けたいと思って生きてきた。しかし現実には、そもそも「大恥をかく」チャンスすらほとんど無いのだ。

 それに、この一年間、学校にも通わず、仕事にも就かない生活を送ってきた結果として出てきた一番の欲求は、

「恥をかきたい」

ということだった。

「恥をかくことだけは絶対に避けたい」

と思っていた自分は、恥すらかけないことがどんなにしんどいかなんて考えたこともなかったが、何もしない生活を経て、その苦しみを、身を持って知ることとなった。その苦しみを知ったがゆえに、私の針は、

「恥をかきたくない」

から、

「恥をかきたい」

へと、全く逆に触れてしまうこととなった。

 いままでの人生、あんなにも、

「大恥をかきたくない」

と思って生きてきたのに、実際にはそんな機会などほとんど訪れないということに気づくまで随分と時間がかかった。

 恥をかきに行こう。