眠りと覚醒との狭間

 私は主に入眠に難がある。一時間以上布団に入ったまま寝られないなどということはザラにある(当たり前すぎて、以前は異常だとすら思っていなかった)。いつまで経っても寝られないと、いくらか焦りが出てくるし、それがある種のストレスにもなって、あまり心持が良いとは言えない。

 ただ、最近は、あることに気づいて、ストレスが多少軽減されることとなった。それは、布団に入ってなかなか寝付けない状態の時というのは、必ずしも常に100%覚醒状態にある訳ではないという事実だ。

 いままでは、

「眠りについている状態」

と、

「覚醒している状態」

の二つだけが人間に備わっていて、

「眠りについていない=100%の覚醒状態」

だと思っていたのだが、それはどうも違っていて、実際には、「眠り」と「覚醒」との狭間に、様々の曖昧な状態がグラデーションのように拡がっているみたいだ。

 これに気づいたのは、ある日布団に入ってしばらく経った後、寝つけずに仕方なくトイレに立ったときのことだった。

 私はこのとき、

「ああ、入眠がスムーズに行けば、トイレになんか行かずに済んだのに・・・面倒だなあ」

と思いながらトイレに向かっていた。そしてもちろん、そのとき自分は、100%覚醒状態の中にあったつもりだった。何しろ起き上がってトイレに向かっているのだから。

 しかし、実際は100%覚醒どころではなかった。歩いている最中はフラフラしてしょうがなかったし、意識があるのかないのか自分でもよく分からないような状態で歩いていた。このとき私は半分以上、いや、6割7割方眠っていただろう。

 意識があれば完全に覚醒しているというのは間違いだったのだ。ということは、自分ではなかなか寝付けないと思っていても、実際にはほぼ寝ているような状態だったことも幾度かあったのかもしれない。入眠に対するハードルが少し下がったような気がする。