「ブブブ」
という音を立てながら、虫が飛んでいる。嫌な音だ。音を聞いた瞬間に虫が連想せられるので、羽音は嫌いなんだ。
と、思っていたが、どうも、
「羽音それ自体が嫌」
なのではないかというような気がしている。
もし、そうではなくて、
「虫が連想せられるから羽音が嫌」
なのだとしたら、仮に、羽音が、森の葉っぱがさやさやと揺れているときのような音だったとしたらどうだろう。
それ自体、すごく爽やかな音であると思うが、やはり、
「虫が連想せられるから、嫌な音だ」
となって、葉っぱがさやさやと揺れるような、爽やかな音も嫌いになってしまうだろうか。
羽音が、お寺の鐘の音のような、ジーンとくるものだったらどうだろう。私は、
「ボーーン」
という鐘の音が好きなのだが、もし羽音も同じような音を発しているのだとしたら、好きだったはずの鐘の音ですら嫌いになってしまうだろうか。
もし羽音が、玉置浩二さんの歌のような、柔らかくて温かい響きを持つ音だったとしたらどうだろう。それでも、
「虫が連想せられるから・・・」
といって、玉置浩二さんの歌声すら嫌いになるだろうか。
いや、もし羽音が、そういった好きな音に似ていたら、私は羽音フェチの虫愛好家になっていたかもしれない。