話し始め、終わりのところでリズムを生む

 普段、何か物事を淡々と考え、それを淡々と口に出すというやり方に慣れていると、対話の場面などではいいのだが、こと、くだけた会話の場面などでも、その淡々としたリズムで喋ってしまうということが起きる。

 別に、それで良いじゃないかと言われてしまえばそれまでだが、淡々と喋っていると、会話にリズムが生まれてこず、話し相手は、私の喋りのリズムに乗ることが出来ず、しかもなんだか私に詰問されているかのような感覚を覚えてしまって、非常に話しづらさを感じているのではないか、というような気がしている。

 そこで、何とか、くだけた会話の場面で、上手くリズムに乗って喋られるようになるために、例によって会話の上手い人達を観察してみることにした。すると、話を始めるとき、話を終えて相手に渡すときに、上手いことリズムを生んで喋って、相手が会話に乗りやすいような工夫をしていることが分かった(当人達が意識してやっているかは分からないが)。

 例えば、話始めに、

「そ~う言えばさ~あ~」

であるとか、

「な~んかねえ~」

というように、リズムを生んでから喋り出し、また、話の終わりに、

「ということなんだけど~、これってどうよ~?」

であるとか、

「そういうふうに思わな~い?」

というように、上手くリズムを作ったまま、相手に話を振っているので、相手はそのリズムに素直に乗っていれば良く、非常に話しやすそうにしている様子がうかがえるのだ。

 だだっ広いフロアにぽつんと置かれて、

「はい、踊ってください」

と言われたのでは踊りにくいが、一定のリズムを持った音楽が流れているところで、

「踊ってください」

と言われたならば、いくらか踊りやすさを覚えるだろう、会話もそれと一緒なのではないか。