その空気から降りきれはしない

 談笑が、私の周りを包んでいる。そこで私はと言うと、別に、わざわざその空気を拒絶した訳ではないのだが、この場で談笑に混じる気にもなれず、かと言ってその空気から完全に落っこちて無視もしてはいられずに、ほわっとその場にただ浮いている。

 斜め向かいに座っている人も、見る限り、この談笑には混ざれていないようだ。いや、混ざれていないのとは違う。あの人は、

「関係ない」

として、きっぱりと混ざり込むことを拒否しているのだ。

 「私も、この空気から完全に降りきれたら楽なのに・・・」

あの人のように。しかし、それが私には出来ない。何故か落っこちない。降りない。談笑に参加しているのではないから別に離脱しても良いではないかと思う。いや、でも、

「そういえば○○さんもねえ? そうだって言ってたよねえ?」

「あ・・・ええ、はい!そうですそうです!」

来る。こういった、談笑のクッションに挟まれる瞬間が必ず来るのだ。そのときもし私が完全に落っこちていたら、私が沈黙を作ってしまう。それが怖くて、離脱することなく一応、その場に浮いておいているのだ。

 別にそんな談笑なんか止まったって良いんだ。本当を言えば。それで恨まれるようなこともないだろう。ただ、あの一瞬の気まずさが、止めてしまったという気まずさが、気の小ささが私を、完全に降りきることから遠ざけている。