不思議と愉快

 表面に残った自意識だけではとても太刀打ちできないほどに、心身ともどもがほぼ怒りの感情で満たされ、その怒りのまま激しく相手と喧嘩した後、もうどうしようもないほど怒っていたのが嘘のように、次の瞬間から愉快な気分になっているのは面白い。

 生命の危機かと見紛うほどに全身を怒らせた反動による安心なのか、瞬間ほど前のことであるとは言え、それはもう過去のことなので、ある程度客観的に観察することが出来、その客観的観察の結果見えてくる、私の怒り姿のあまりの滑稽さに笑ってしまうのか。

 とにもかくにも、先ほどまで、

「もうおしまいだ」

というような勢いで怒っていたとはとても考えられないほどの愉快さが、直後に私を襲うのである。ただその愉快さも穏やかという訳にはいかず、一種の異常興奮のなかで起きていると言わなければならないが。