大きな壺のなかに、渦が巻いている。円を描いた中心に、球状の物体をポトリと落としてみる。

 渦に、何の変化も起きたようには思われない。ただ、しばらく見ていると、心なしか渦巻く速度が少しだけ上がったように思われてくる。

 球状の物体は何処へ行ったのか。気になって、渦巻く先へそーっと指を近づけ、薬指の先だけポチャっと浸してみる。

 別段、渦に抵抗は感じられない。そこで、ぐっと第二関節、更には指の付け根まで浸るほどに進めてみる。相変わらず、拒絶は感じられない。が、

「やめた」

スッと指を引き上げた。

 湿った指の関節が、途端恐怖を呼び起こし、慌てて壺の前から飛び退いた。何も起こらなかったことを確認し、おそるおそるまた壺のそばへ。渦の表面へとおそるおそるの顔を向け・・・。

 先ほどまでと何ら異なるところのないまま、渦は柔らかな音で、穏やかに巻いている。ホッとした私は、残された次の球状へと目を向けた。