そのものへの過程さん、お手紙ありがとう。しかし冒頭から、

『私はあなたの過去です』

と書かれていたのには驚きました。そして私が、

『そのもの』

と呼ばれていることにも。

 まあ、もしあなたが本当に、私の過去なのだとしたら、名前には区別がつきませんものね。

 それで、本題の、手紙の中身についてなのですが・・・。確かに興味深い内容で、面白いものではありましたけれど、私の勉強不足の故でしょうか、何度読み返しても全く芯から理解することは出来ませんでした。なかでも、手紙の途中々々に現れる、

『どうしてあなたはそのものになっていけたのですか』

という質問などは、特に分かりませんでした。冒頭で書きましたように、私が、

『そのもの』

と呼ばれていること自体が非常な驚きでしたし、そもそも私には、

『そのもの』

になっているという自覚がまるで無いのです。

 また、手紙の末尾の方、

『是非、様々試みた方途を教えてほしい』

とありますが、そうした練習のようなことを、はて私が本当にしたのかどうか、そんなことしなかったのじゃないか、というような思いばかりが胸をよぎります。

 そのものへの過程さん、期待に添えなくてごめんなさい。わざとはぐらかしているのではなく、あなたが言っているようなこと、どれもこれも、私の身には覚えのないことだというのが正直なところなのです。あなたは、本当に過去の私なのですか。