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憶えすぎる

確認したがり

 「2日前の夕食を思い出せるようにしましょう」

脳トレか何かの類で言われていたことではなかったか。なるほど2日前の夕食は、と急に訊かれると、なかなかに思い出せないものだ。

 ただ、思い出せるよう常から意識しておくと、2日前の夕食を思い出すことぐらい、さほど難しいことではなくなる。

 ・・・とそこまでは良かった。この後が悪かった。2日前の夕食だけ思い出せればそれで充分なのに、

「2日前の夕食が、1日経って3日前になると、途端に忘れちゃうのかい? まあお前はそんなもんだよな。どうだ、思い出せるか? それ見ろ、思い出せないんだろ?」

という悪魔の囁きが私を襲い出したのだ。私は私で、そんなの思い出そうと思えば思い出せるのだから放っておけばよかったのに、

「よせやい! 忘れるもんか。憶えているに決まってるじゃねえか!」

と、つい張り合ってしまったのだ。こうなると悪魔はエスカレートしてしまう。

「ほう、夕食も憶えていられるなら、その日の朝食も憶えていられなきゃおかしいな? 昼食もそうか。何ならお菓子もそうだ。何だ、お前は夕食しか憶えられないのか。まあ、そんなもんかお前は」

と。

 そうして、無視できない私は、最もひどいとき、2週間分の全ての食事を記憶していたことがあった。さすがに、

「うんっ・・・!」

とパンクを起こし、そこから一切、食事を憶えておくことなどそのときでやめにしていたのだが、ともすると、忘れたころにまた、知らず食べたものの記憶を始めてしまっていることがある。あのときの癖がついてしまっているのかもしれない。