実際に会うと、意外に遠い

 本を通して、というより文章を通して、作者と私は異常なほどの近さになる。フィクションだろうが、ノンフィクションだろうがそんなことはお構いなく、実際に会ったのではあり得ないほどの距離感がそこには生まれる。例えるなら、私の頭が、作者の腹中にぐいとめり込み、背骨にまで届いてしまっているような感じだ。

 この接近感の例えの通り、距離の近さとはイコール親しみやすさのことではない。とにもかくにも近いという事実、現実の世界ではあり得ないほどの近さになるというただそのことだけを言っている。

 それを鑑みると、実際の作者に会ったときにガッカリするというのは、

「印象と違ったから」

ということだけではなく、

「実際に会ってみると、意外と遠かった」

ということにも因っているのではないだろうか。結局、文章の中で会うほどの近さは他にないから、現実の距離がやけに遠く感じてしまうのかもしれない。