外側は何も変わっていないのが不思議でしょうがない

 精神的に調子が良いときは、あらゆる可能性が開き、その全てが実現されていくような感じがし、精神が閉じているときは、どのような道であれ、その全てが閉ざされたように感じる。

 こうやって気分のリズムが変動しているとき、私の外に拡がる世界の方では、別に何の変化も起きておらず、また、外側の世界が私の道を、実際には開いたり閉ざしたりなど全くしていない、という事実が不思議でしょうがなかったりする。

 こういうときに、私と同じような、ありもしない障壁が急に出現したり取っ払われたりするというような幻影を見ている他人に出くわすと、意外にも、

「大丈夫、それは頭の中だけで起きていることだ」

と冷静に指摘できるのだが、それが自分のこととなると、そうはいかない。

 これだけ、

「道が開けた、閉じた」

ということに対する気分の浮き沈みが激しいのだから、外界もそれに伴うぐらいの大きな変化が起きていなければおかしいと思ってしまうのだ。これが頭の中だけでの変化だったのなら、こんなに気持ちが揺れるはずがない。外界が全く変化していないのに、頭の中の変化だけであんなにも気持ちが振れるのは馬鹿馬鹿しいではないか、と。

 しかし、いかに馬鹿馬鹿しくとも、変化しているのは気分だけなのだ。