全部に付き合っていたらキリがない

 たとい誰かが勝手に設けた基準であったとしても、

「この基準で言うと、あなたは下の方に属します」

ということを示されるのは、自尊感情の少しでもある人なら誰でも不快に感じるところだろう。

 だが、往々にしてそういった基準を設ける人は、まさにその、

自尊感情がある故、そういった位置づけをされると不快に感じる」

というところに目標を定めていて、要するに、人々が感じる、

「不快から逃れたい」

という気持ちを利用して、自己の設けた基準に従わせたいと思っていたりするものだ。

 だから、誰だか知らない人が設けた基準であっても、その基準の中で上を目指したいと本心から思っているならば、別にその人の基準に従ったって構わないが、ただ不快感から逃れたいばっかりに、他人が設けるあらゆる基準を追いかけて疲弊してしまっては仕方がないので、

「他人が設ける基準なんて勝手なものだし、人の数だけ基準があると言っても過言ではないのだから、全部に付き合っていたらキリがないんだよ」

という前提を、よく頭に入れておく必要があると思われる。自分が付き合いたい基準にだけ付き合っていれば別にそれでいいのだ。