寿命のある身が寿命のある身を笑う不毛さ

 健康のことを考えず不摂生を行っていたり、追いこまれて精神状態が通常ではなくなって、眉唾ものと思われるような治療法に手を出していたり、あるいは一般的な治療を拒否していたりと、あっちへバタバタこっちへバタバタしながら生にしがみつき、あるいは突き放し、ついには死んでいった人たちを、残された、どっちにしろ結局死ぬ人間が笑う不毛さ。

 「馬鹿だねえ、あんなことしていなければもう少し長く生きられたのに」

と、注意に注意を重ねたところで、たかだかその人たちより長く生きられるのは20年やそこらの人間が偉そうなことを言うおかしさ。

 どんなに完璧に対処していたって、遅かれ早かれ寿命が来たらば、誰かれの差別なく皆お陀仏になる人間が、少し自分より死ぬのが早かったからという理由で他人を嘲笑う愚かさ。

 黙って静かに手を合わすことができず、ジタバタしていた人たちを断罪し、自分は死に及ばんとするときでもジタバタすることは決してないかのような顔をしているその欺瞞。