「ジキルとハイド」が気になる

 読んだ人も多いであろう。名作、『ジキルとハイド』。私はいままでに2回ほど読んだが、詳細は忘れてしまった。だが、いつからだろう、長いことこの作品が、ずーっと気になり続けている。それも、

「読んでいて楽しかったから」

というような気になり方ではなく、ちょうど、忘れたタイミングを窺っていたかのように、たらーっと冷たい汗が背筋を這うような感じで、断続的に気になり続けているのである。

 確か2回とも、一気に読んだ。読みやすかったこともあるのだろうが、それ以上に、のめっていたという感覚が確かにある。

 『ジキルは、「ハイド」という小説を書けば良かったのではないか。そうすれば、薬も不要だったのでは・・・。もしかして、「ジキルとハイド」という作品自体が、著者にとっての「ハイド」であったのかもしれない・・・』

などということを昔に考えて、そのときはあんまり突拍子もない考えだと思ったから、誰かれに披露することなくしばらく控えていたが、今思うと、別に突拍子もない考えという訳ではないのかもしれない。

 ジキルのままハイドを演る訳にはいかないという、ジキルの臆病が、傲慢が、どうも他人事には思えなくて今でも冷や汗が出るのだろうか。ジキルは最終的にどうなったのだったか。ハイドから戻れなくなった後、死んだのだったか・・・。抑えつけた結果、むしろ1番最悪な形で、ジキルはジキルに戻ったのだろうか。