一区画

 歩を進めていると、俄かに前方の景色が華やぎ出した。駅がもう近いのだろう。高架線を支えるように、歓楽街から一区画だけ切り取って持ってきたような雑居ビルが整列している。

 その切り貼りが、一帯を脅かしもせず、空っぽにもしてしまわず、見事な興奮を辺りに添えている。自然を押しのけたはずのそれらが、何とかそこで調和を取り戻そうとしているようにも見えた。

 私は、この街の、明りの消えた姿を思い描いていた。ひっそりと静まり返ったビルの群れが、風に揺られてさやさやと音を立てている・・・。明け方、白みだすまでそこは、森の姿をしているのだった。