<14>「合奏の可能性」

 痒い。手前勝手な調和のことを考え、それが少しずつ、あるいは大胆にズレていくのを目撃し、たまらず痒くなる。しかし、勝手なひとりよがりの考えだから、他人には伝えない。他人もその調和を目指した方が快適だろうにな、と思うことはいくらも、いくらでもあるのだが。ほら、あそことここでぶつかった、ほらまた・・・。

 それはそれで不自然だが、歌の占める割合がもう少し増えていかないだろうか、それはそれで不自然だが。窮屈だ、気詰まりだ。ところで私は・・・。楽隊は、前列しか演奏していなかった。後列は、別に意地悪をしているようには見えない。届くものが届いていない。演奏できる可能性があるということに気づいておらず、用意もしていないような状態だ。これは私が悪い。全体が演奏を開始してくれるまで、後何年かかるだろうか。