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 悲嘆はもう語れまい。嬉しさ、あるひとつの快楽がついてまわる。悲しみを打ち明けられない悲惨さ、悲惨? それも、間違いのない全的な悲惨というのはもうない。語れば、いや、語らずとも、悲しみを想い浮かべただけで、その裏にびったりとくっついた喜びが浮き上がってくるのだから。よく考えなければ良かったと君も思うだろう? しかし、よく考えれば、だんだんにそういうものとの絆は薄くなっていかざるを得ない。その喜びに無関心ではいられない。無邪気に悲劇を演ずる人々が、やたらと遠くに映る。そのあまりに無遠慮な姿を見て、それでも君は、よく考えなければ良かったと相も変わらず思うだろうか? ともかくも、これで私はまたひとつ浮かんだ。悲惨だろ?と自嘲することも、もうないだろう。