<106>「帰り方」

 帰る、ということなど特別意識していないような様子で、帰らなければならない、ああ、帰ったね、あれ・・・帰ったよ? あらまずいじゃないと、しばらくの間を置いてから気づかれるような、そんな自然さで、帰ったらまずいかなあとか、よし、ここはもう帰ってやれとか、そんな邪な気持ちで帰ったらすぐにバレる、おい、何帰ろうとしてんだよ、帰っちゃダメだろ、という話になる、これは立ち方の問題、佇み方、身体の使い方の問題だ。泣いていても、もうその爆発でスッキリしたら、後は適当に泣き止む、わあっと怒っていて、気が済んだらすっと機嫌を直す、その場の空気上、怒り続けていないと気まずいから、なんてそんなこと気にしない、惰性で怒らない、いつだって先を行くのは赤ん坊だ、なんだか喧嘩をしたらいつまでも顔をそむけていなきゃいけないような、もう一秒か二秒後には気が済んでんのにね、何十日、何百日、下手したら一生会わないような、そういう痩せ我慢、そんなのは固い固い、もう一生会わねえよって、言ったそばからわりぃわりぃって戻ればいんだよ、気が済んでるなら、もう踊らないって決めたっていいけど、踊ったっていいよ、ボールが見えなくなるまでキャッチボールすりゃ、それでいんだよ、プロ野球選手じゃないんだから、さっと解散した方がまた集まりやすいよ、あんたも。