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 焦る、それは時間がないという意識からだろうと思われるが(むろん、ここでのそれは、時間というものはないのではないかと直観する、あるいは疑いを持っているという意味での「時間がない」ではない。もしそれを持っていれば、焦りはしないだろう)、それだけでは少し足りなくて、その奥には、

「何かが完成する」

あるいは、

「何かを完成させられるはずだ、させなければ」

という幻想が潜んでいる。人物の完成というこれまた曖昧な、それでいて不可能な想像が、ジリジリとした焦燥を煽る。非実在者との差異を見て、冷やりとする、絶望的な距離に思われるからこそ焦る(そもそも距離自体がないのだが)。何かの為の今、という処理を延命措置以上のものとして評価してはならない。常に、非実在者の顔から眼を逸らさず、額に嫌な汗をかいて、

「まだまだ」

と言っている精神の、その活動が自由な拡がりを見せていく可能性の放棄、焦っているときほど全てが止まってしまっている瞬間もない。