<126>「混乱も度を過ぎると」

 途方に暮れる、結果的にずっとそうしていたと、大きな声で笑われている人がいたとしても、私はその人を笑えない、外形的な違いを装っていたからといって、途方に暮れる人でなかったと胸を張るつもりもなければ、張れやしない、自分がそうではなかったなんてとても言えない。あっちへ行きこっちへ行き、最後まで忙しなくバタバタ動き回っていた人、私がよくじっとしていたからといって、バタバタすること、焦って動き回ることと無縁だったとはどうも思われない。混乱も度を過ぎると、やけに落ち着いているように見える、実際冷静に動けたりもする、いつも落ち着いていて偉いね、行き過ぎた混乱だとは全く思われていないことでまた動揺する。ある日突然ぷつんと切れる生命のあり方に納得いかなくて、生き切るという幻想を持ち出す人をまさか笑えまい(自分にはそういう部分が少しもないと、まさか言える訳がない)、しかしそこから、生きているのに死んでいるとか、あの人は本当に生きているとかの錯乱した表現をわざわざ持ち出さなくてもいいよ、とは思っている。混乱の中心で落ち着こう、と他人に強いるのもおかしい、そこでひとり、落ち着いているようなフリをしていれば・・・。