<170>「親指が痛いぐらいのことで」

 親指がいたい、それも、ちょっとしびれを感じているぐらいの程度で、どこまでも押して行けたら面白いだろうな、いや、そういう場面てのは意外とよくあるような気もする。相手が深刻な家庭問題、またひとりは大病、またひとりは大いなる憂鬱を抱えているところへ、プレゼンテーションと熱量で、どんどんと入って行く、圧倒していく、親指が痛いぐらいのことで。あー痛い痛い痛い。

 実際圧倒されるだろう。あんまり勢いが盛んだと、

「俺の状態の方が深刻なんだけどな・・・」

なんて考えは、スーッと後ろの方へ退いていく。あんまり大袈裟なんで、笑ってしまうかもしれない。周りの人の方がよっぽど深刻な状況にあるということに気がつかないのはただ鈍いだけだが、気づいている、よく承知している上で、ぐいっと踏み込んで加速出来る人は良い。そういう人は知らず知らず、周りの人を助けるかもしれない。