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 何回も何回も既に見たところを通らなくていいよ、だってもう憶えているから・・・。不思議なことに、一言一句憶えていなくとも(それが為に何度も戻るのだから)、憶えていると感じるのだ。それは何を憶えたのだ? 感じか、ニュアンスか。つまり、内容を憶えた、というよりぼんやりと把握した、それで例えば物語を読む場合はOKなのであって、というかOKとしないと、全部を頭に入れつつ(それこそ一言一句)先に進まなければいけないのでしんどい。それに、そんなことは不可能だ。だから何度も戻る羽目になる。内容はもうなんとなく把握しているんだからそんなに何回も見なくていいよ・・・。

 これは、音楽を聴けるということと同じ、これが苦もなく出来れば、また物語も読める。流れていったものをいつまでもくっきりさせたままにしようとしないで、残響として処理すればいい。流れていったもの、今現在捉えているもの、これから流れてくるもの、こういうものを難なく繋げる(繋げなければ物語など読めない)ということに、ひとたび疑問が投じられると、もうまた何度も何度も戻ることになり、困難が大きくなる。