<299>「沈黙する行程」

 訳の分からない坂を仰ぎ見て、どこまで行ったらいいものやら、散々な目に遭いながらも、何とでも上手く言えてしまう状況が容易に想像出来ると、そのことでまた疲れてしまう。上手く言って逃れるというのが仮に(仮にじゃなくてもいい)大事なことだとして、為した後には、そこに大きな穴が口を開けているのを見る。押し黙ってどんどんと追い込まれている方がマシなのではないだろうか。決してそんなことはないのだろうが、まあどうかなあ。押し黙っている方がいいなんてなことを考えるぐらいだから、そんな余計なこと言わなくてもいいのじゃねえかと思うことはよくある。しかし、そういった余計なことを、余計なことと分かっていながらしっかりと取り込めることが大事で、というかそれが渡り方なのだ、というのは分かっていて、野暮を承知でそれをずんずん出来るのは、そりゃ偉いやな、かなわないやなと思っている。まあ決して自分も同じようにしようとは思わないのだが・・・。