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 そう、警備を拒否してしまえばいいのだ。最初からそうしていれば良かったのに、と軽く浮かれて、入りたい放題出たい放題の群衆を眺める。尤も、核心に近づける訳ではなく、殺到する人たちは大喜びで外側をぐるぐると回るだけだったが(非常に速かった)。

 走り回らないうちから、もう何周も回ったかのような表情をしている者がひとり居る。こちらの方でも手招きするのが億劫であるといった感じだ。嘘だ、守らないというのは嘘だ。そんなことはないのだが、嘘だと言われれば確かにそうなのだという気もして困った。比較的検討力の薄い空気を冷ややかに包み、投げ出すのは誰だといった問題を徐々に殺してゆく。人間ではないものの姿を私は見るのだろうか(私に?)。随分と狭い条件に収まろうと皆で殺到するものだから、そりゃ窒息死を招ぶのが当たり前というものだろうと思った。爛々と輝く視線を、植物にも見留めなければ動物にも見留められないので、そういった視線の人にぶつかると、ある種異様な空気を感じるのだったが、それが良い印象に繋がるのか悪い印象に繋がるのか、どちらでもあり得るというのが不気味さの原因であるとも思ったのだ。