<302>「古い夢を見よ」

 大検討の古い夢を見よ。自分の見た夢の呈示という不可解さ。道順のないごわごわからあれよあれよと道が現れて、通過する。久しく夢を回復していなかった不安と破られた安堵で、しばしの休息を楽しむ職業人は、もう一度初めからやり直し、技術もリセットされるとは夢にも思っていない。尤も、本当にリセットされる訳ではないのだが、完全にリセットされたように感じるのだから、ほぼリセットされたのだと考えても間違いがない? 技術が離れ難く身に染みついていることにいちいち驚く当の本人は、検討を加えることはしないのだろうか。何故なら最初の一歩であるはずだから。歩行姿勢を間違えないことに似た夜の気まぐれ。薄ぼんやりとして見えにくくなった全体と私とに差がないことに、ぴたっと合わさる感情はないのだった。