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 困惑した傘を提げ、内証の通路をゆく。外壁を激しく打つ音に紛れ、ひとときの焦りはこちらを覗く。どーん、どーん。ひたむきな鐘の音は、まだあまりにも明るく、こちらとしてはどうすることもない。試しに、叫び立てるのを遠慮してみた後で、これでもかと轟くその声は、眠りかかる空間を満遍なく、しかしねとねと渡る。

 それは私の、いやそれは私の予定だ。決して目が覚めない。何故ならその予定を立てた覚えがないからだ。しかし、いやしかしそれは私の予定である? とんでもない。明日からの表情を切らした。

 不可解な持ち合わせについての回答を先延ばす。執拗に取り上げられるだろうことが分かり、多めに持っていた? 否、ここに集まった理由も意味も、そんなものは笑って済ませればよかったのだ。朝は軽い。随分と傾いた窓をひとしきり撫でてみる。