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 私が見たものはそんな通りではなかった。荒くなる息を潜め、いたずらに視線が薄枯れていく。昨日今日の夢、昨日今日の夜、昨日と今日の優しい影を確かめて、それは走った。否、走るまでもなかったのだが。

 動揺するのは後でいい。もう一度見る景色は大分鈍いのだが。階段を、いきおいよく駆け下りて、検討は走る、走る、走る走る走る・・・。

 帰った記憶ごと、何処かに置いてきているそのひたすらな名前はいちどきに姿を消し、乱暴に振る頭どもを丁寧に数え立てる。ああ、情けない身体を下に投げ、捨て去り、私は逃れる。暴走通りの微笑みを不愉快に、誰かと共に聞いている。