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 同時的な悲哀を抱えて、別人は去る。夢の谷間の深い流れに身を任せる後ろ姿は、問答無用の寒さを告げている。緊張はない、後悔もない。早くも遠くへ流れ去る光景を前にして、ひとつくしゃみを混ぜてみるだけだ。

 奪われた者たちは、奪われた者たちで集まることをやめ、気の済むまで浅く、浅く眠る。検討のない夜だ。長く生き過ぎた者の震動が、全体に伝わり過ぎるばっかりに、私だけではないだろう何者かが何も分からない。怒りは湿った土に触れ、ひやっとする表情の、目の、あまりにも全てであり過ぎる目の、情け容赦のない往来。隠れる角も隅も、忍耐に値する気分も天気もない。別人はようやく歩き出した。