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 何かを憶えている、というのは微妙な問題だ。適当さと深さとが混在しているので、記憶力が良いか悪いかの基準を定めることが難しい。ごく限定的な条件を定めてしまえば、その条件内での結果はいまいちだが、他の領域においては抜群の記憶力を誇る人などを見落としてしまうことになる。

 日常生活に支障のないレベルの記憶力があれば特に問題はないだろうに、そのレベルにある人たちを、記憶が良い悪いなどといちいち細かく指摘してオロオロさせているのは一体何なのか。また、記憶力が良いということはしんどさでもあり、完全にボケてしまうのは確かにこわいことだとしても、老いが深まるところまで深まった後もまだ記憶がしっかりしているというのにはまた別のこわさがある。

 何かを憶えているということにここまでしがみついてしまうのは何故、いや、何なのだろうか。昨日の夕食を憶えているとしたら何なのだろう(そんなこと、小学生の時に気にしていたか?)。よく分からない。