<412>「乾いた音とともに回る場所」

 この男は、出口でひとり、説明不要のものと化していて、戸惑いを存分に回転させうるだけの場所となっている。また、それは決して理解不能のものではない。当人が、まさか、この態度を持て余している。しかし、それを感じさせないよう、力強く、ただ立っている。

 ただ立っているものは、めまいの対象となるほかない。一度目にしたものを、疑う訳ではないが、まあくたびれた。大層くだけた、非物理的な元気を抱えて、湧き出す先を確かめて、到着を促す。もう時刻は過ぎている。問題ない。空になったホームを、風を切る音と共に、後に残していくのが早朝の目覚め、それから・・・。

 注文はふたつ。不安定な心持ちを、決して開き直りによって逸らさない。不安定な心持ちを、決して反省によって逸らさないこと。入口までわざわざ出向いて、脱力の方途を授ける。そこに感激はなく、ただ、静かなリズムが、ただ、転倒と笑みであるだろう道程が、出口の景色を包んでいる。