<424>「不在者の宣言」

 留守に訪ねてくれ。理由は訊かないでくれたらいい。訪ねてくれれば充分だ。さあ、行った行った。どこを探さないでもいいんだ。予定も要らない。懸案も、約束もそう。そんなものは適当なところへ置いておけ。まさか、そこを行くのを見た、急いでそこを曲がるのを、見かけたとでも言うのか? へえ、そりゃ。

 話し声が玄関ばかりに沈殿し、入口の役割を放棄しようとするから、そう遠くもないが居間で、大きな声で笑ってやったのさ。そしたらどうしたと思う?

「今、ワタクシはいません」

と言ったよ。いっそ空っぽであった方がどんなに良かったか知れないや。

 いやいや、これは、特別な場合にだけ、ある訪問者であれる。内緒にする何ものもないのに、コソコソと喋って機嫌が良い。うふ、くす、あはは、はは。不在者担当としてここにひとつの宣言をする。全てが行くことであれ、そうすればただ行くだけとなる。帰る道も、日付も、あるひと区画も、要らないから言うんだろう?