<427>「ぬるぬるする筋肉」

 私には想像もつかない、制御を振り切った顔が、そこにあっていればこそだ。楽をしているのだろうか、楽を。身体をひどく強張らせているが、それで一体どこへ動こうというのだ? 距離を取ることが一番の課題であることを確かめた(それは確かなのだろうか・・・)。間合いも何もなくなってしまうことを溶け合うことだと考えてきたのだろうが、完璧な距離間のもとへ収まるのが溶け合うということであったらば。しかし完璧な距離間というもの、それが現実でないとは言わないが、ほぼ想像物だと言ってもいいぐらいにその訪れは稀で、収まったとしても一瞬であった場合がほとんどだろうと思われる。であればその周りをチョロチョロしていよう。近過ぎて読めないというのは、何も眼で見る場合のことだけには限られない。

 例えば、距離が遠すぎるとき、あるいは近過ぎるとき、思い切って一気に逆へ振れようとすることがある。確かに、それは脱出や飛躍の為に重要であることもあるのだが、じりじりと間合いを詰められるようにしておくと、またそれもいいだろう。ぬるっと進み出てそのまま止まらないという筋肉の使い方もある。