<469>「ただの脈つき」

 嘘は嘘として、本当は本当として、この、動いていないとしか思えないもの、静かに沈黙しているとしか思えないものの、大きな震動を、ひとつの手に余るほどに感じていたい。大がかりな鳴き声は、大袈裟な動きそのものは、執拗な前進は、確かめる術もない。ただ、そのものが、あるとき、明らかに場所を移してしまっていることは知れる。どうだ、動いているなんて思いもしなかったろう? そんなケチなセリフ、思いついていやしないのだ。とっても快活に笑いたくなったから、ああ、動いているとは何ということなのでしょう、と、大きな声で笑ってみた。

 特別視を知らない運動に、無視や、無関心といったものは最初っから入っていない。入ってきようがない。ただのもぞもぞ、関心という言葉では括れない脈動を、もとのもとの景色として憶えていたい。また、今でもそうであるはずのものを、忘れないでいたい。