<479>

 しっかりと応えられないことが分かるのだから、振り返らない景色が日に日にここで親しくなる。空間が、知らない地点と定めたその瞬間から、雰囲気は徐々に徐々にひとりへと変化する。

 誰の、それは、誰の挨拶であるか。きっとそれは、向こうでくたばるほかない、私などの、綺麗な夜だ。

 何かが、何者かが、便利な型に自らを育てていくので、

「これは罠だ」

しかも、快適で、好意的で、的確で、柔らかい罠だ。だから、溶けやすいところから順番に溶け出してみている。風に左右され、天候に押され、夢を見、沈殿した感情を、限定的な時間へ、ひらに押し込んでいる。謎を、また謎を、ここから吐き出せ。ならば、まだ見たこともないものをひとつ、またひとつと咥えていて、こらえるつもりもないのだから。