<492>「柔らかな身体は拡大し」

 これだけの丈夫さを持つ。何かに耐えるためでもなく、気紛れでもなく、動きいいからこちらにステップを踏むより他に選択肢がなかったのだと思う。イメージほど壊れていなくて、ああして襲われた時間は何だったのかと思わないでもない。

 これだけの脆さを持つ。全く予想しない訳でもないが、ひょっとして私に脆さなんてなかったのではないかと考える時間が愚かにも存在し、またその後に黙って受ける。これだけ脆くなければ、所々での柔らかさもないのだと思うと、どちらかひとつを選ぶ訳にもいかないのだろう。

 おい、どうだろう? 汚いだろう? 必死に排出しようとした結果であるということを、何度も忘れそうになる。他人の悲鳴は皮膚の外側を通る。こちらからは、耳を破壊しようとしているようにしか思えないのだから。

 場所を移さないことにより、何に耐えているのだろう。動けない訳ではないが、このままで動くことは大層気持ちが悪いということを言っているのだろう。あの停止が、今現在に全く響いてこないのは、驚き以上のことだ。

 きっとここから柔らかな運動は徐々に拡大し、何の苦痛もないといった表情で歩を進めているぞ。上手く反省してみようとしたり、しっかりと憶えておこうと思ったりしてもそれは仕方がないだろう。直接くっついているもののなかで起きていることだから。