<504>「秘密がなくなる」

 秘密のひとつもないから、ここは大層謎めいて見える。探る場所が、きっかけがないとき、あなたならどうする? 何もない、なければないだけ、そこを覗いてくれ。暗さのなかへ飛び込んで、音もない風もない匂いもない。検討すべき場所もなければ、人たちが濁るきっかけもない。ハッと気がつき、ただ俯いていただけだということが知れるのか? そんなのはあんまりだとは思わないか? 

 何かを感じないように仕向けたのか、いや、そういった動きが必然としてあって、自然にそこへと合わせていったのか。冷淡からは程遠い。何ものでもよく通る。下りたり上がったりするタイミングが次第々々に分からなくなっていくのだろうが、こいつは慰めの気持ちなどにも用がなくなると言うのだろうか? 聞いていなくなる、留まっていなくなる。きっと何事も、あれもこれも用意されて全く驚かなくなるだろうが、それをしっかり、見ているには見ている。