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 例えば、長い夜を招んだ。行きつ戻りつしない影、次第に退き、天才的な眩しさでそこを締める。それに引きかえ、ここは当然直線的な、一方向への歩みではない。紛れもない旋回、あるいは、次を決めない徒なふらつき、その余のもの。名前を訊ねる者が、次の瞬間には無効になっていることを知りつつ笑うように。

 境界線に指を這わせ、さて、ここに招かれて何を語ろう。大袈裟な確認を、繰り返す横で、一度きりの抑揚が音を残す。残されたものたちに別に繋がりなどはなく、ただ暗がりで、それはただの謎であると皆が言う。謎以外のものにさせてはならない、と誰かが言う。さすれば、微妙に噛み合わないものから順々に声に出していかなければならないと、遠慮を忘れて私が言う頃に、大まかな場所は辺りに散らばり始めていくのだ。

 これだけ腹にたまりかねれば、さていつまでも、まだその前も、というより、延々積み上がり続けるものを延々と削り、それでいて、ここからは何が減ったのだろうと考える。そのそばで、大きな感情が素通りし、不安そうにちらりとこちらを見る。なるべく長く、そしてゆっくり、純粋な黒色であろうとすると、あちらにも、こちらにも恐怖はなく、空間は、次第に深まる疑問と同じものになる。何故か、このタイミングでほぐしてくれなければどうにもならないぞ、というかたくなさをここに見出し、そしてそれだけが頼りとなった・・・。