<515>「日常の声に漏れてくる」

 確かにここまでこぼれてきました。私には分かっていましたが、確かにここまでこぼれてきたのです。

「大きな音を立てるなあ・・・」

何も喋らないよりはマシだと言わんばかりの呟きも、場を徒にかき回して過ぎる。これでは冷静にならなければならないのが誰だか分からないのだが、何故、犠牲にされたものの声だけを聴き分ける?

 そこにはある一定の義務的な態度があるばかりで、感情も、そのアピールも、軽視すらされていなかったが、それがバラバラということならきっとその通りなのだろうし、反論もない。そもそもそんな必要がないのだと語ったところで、一体どれだけの人に伝わるのだろうかと考えてみるだけでも、そこにひとつの眠気を生じさせるのに充分過ぎたのだろう。

 するとどうして警戒の幅は、拡がっているようにも見えたが、

「錯覚だ」

「錯覚か?」

という言葉どもが乱れ飛び、隣に腰掛けてそれを観賞するのはとてもおかしいことよねえ、と言っていた。俺の笑うことか。いや、そうなのだろう。内緒で自由になってみたらどうだいという呼びかけにやや首を傾げ、各地を転々とする。それが私に許されたことだと少し小さな声で言っているのだが、その分、忙しげに電話する働きものにまでその声は届いていた。あつい、それを見てほしい。