<524>「無表情という仕事」

 何故だ、何故こんなにまでしてそこから呼ぶのだ? 何故か、何故かを教えてやろうか? お前が、その呼ばれるつもりもない表情を見せてニタニタと笑い震えることを、こちらでは求めているからだ。

 ふざけた期待だ。だいいち、笑いや感情などは即座に放り出し、無表情の列へと滑り込むのだが、そこで新たに掻き回されても誰も何も言わないのはさすがに怖かった。あー怖かった、そう思う私は感情でした。恥も内紛もありません。何故なら、無表情というものはひとつひとつが仕事であったからです。

 あちらからその警戒を抜け出して、混ぜ合わせたものが本体です。ああ、なつかしい本体。ここまでまとまっているから感動的でしょう? しかししかし、バラバラなものが協力し合って集まっているという考え方の全てが間違いであったなら? びっくりして、走るのも忘れるのだが、走ったところで辿り着くという状況もないのだから、同じところでよく回転し続け、広くそこここに染み渡っていく。安心してほしい。これは何も、ふざけた期待に対する答えを出そうという試みではないのだ。