<563>「延々、円環と」

 誰が座ったかあちこちの光、ここに映されて辿るはずもない。

 人が集まるとも思えない小さな小さな空間のなかに、ひとりで座っている。カラカラカラカラ。車輪の回る音と、独特の個性、呼気、呼吸。何も考えなくてよい、それは少し違っていた。しかしこの加速のさなかに具体的な思いの道筋はなく、透明になったり、灰色になったりする。はあ、これは、次々に倒れて捨てられる、そのそばから、また立ち上がり過ぎているもの。何故かは分からないが、上下する足また足。上下動とほんの上気。踏むべき手順が次第々々に失われていって、これはもう塊。ただ噴出だけがある塊になっているのだ。この道をゆく。

「何故、私は疲れたり疲れなかったりするのだろうか・・・?」

ぼおっと鈍い音がこの画面から滲み出すと、聞こえたはずの男と音がともに、ウトウト、ウトウトしていた。また、その反応を無視する訳でもなく、これは一度、も一度と繰り返されてゆくそうだが、

「はあ・・・何? 私が・・・? そんなことはないと思うが・・・」

ふうふうふう。狭い空間と道の上を交互に行き来しながら、何故このまま回転し続けてゆくのかなどは分からないことですと言う。その表情は、まずくもよくもなく、それ故にまた繰り返し、繰り返されることを承知していた。