<573>「踊るうちに」

 はいはい、集まってくれましたね。なるほどどうもこれから話すことひとつひとつに何か重要なものがいろいろ隠されているのではないかと思って身構えておられるが、なんのなんの心配は要りません。私はこの前雲のよく見えるところまでひとりでトボトボと出ましたところ、混み合うものが非常な興奮を持っていたのです(特に変わったところもないでしょう?)。そうしますと、そこへすれ違う人がいて、大きな声を出して通りました。それにはびくともせなんだ混み合いが、一拍の間を置いてぞろぞろと動きまた徐々に別れ始めました。そこで何かあったなと思ったものですから私は誰かひとりを捕まえて、話しかけてみることにしたのです。

「君は随分と昨日の方向を見ているのではないですか?」

どう応えようかしばらく考えてみた方が良さそうだ、ということだけが分かると、一旦休憩になります。その休みがどうして人間の型を気まぐれに変えてしまったことが分かりますので、どこかへふらっと立ち寄ろうとしたことなどまるで、何の気なしの首振りだと決めて、今度はまた大変に疲れる踊りが始まりました。どうです? つまり踊りついた先がここであるという訳なのです。あなた方の聞く態度からすれば、これはもうほとんど隣のことだ。それで気の済むことだと言えるのかもしれませんね。ここはよくある場所なのですから。