<666>「静かに歩いて来た」

 二度と、そう二度と、この場を訪れないというのは、おかしいではないか。行動に、いくつともなく刻み込まれ、明日が回転するのでなければ・・・。あからさまに扉を、開けまたひとつの、無風、臆病、驚き合い(などなど・・・)。落ち着いて、いるのか感傷は、どこにも用がなく、当たり前の動きが、視線も変えず、どうも、プツリと切れる訳もなく、ゆるやかにゆるやかに、不明の場所に成り代わっていく・・・。

 誰争う訳でもなく、何かと競るのでもなく、ただ、

「ただ、負けたくなかったのでしょうねえ・・・」

と、つぶやきひとつ、足早にこぼれ、おそらくもっとも、もっとも訳の分からない歩みに対して、静かな感想を抱いているのだ。

 すっ、すっ、すっ・・・と、別に控えめなのでもなく、

「当たり前とは明日にも、いや次の瞬間にも変わること」

だと言う、とすると、

「そんなことは当たり前じゃないか」

という言葉は? 瞬間と瞬間とはもう別ものだ、ということを、無意識に繰り返し唱えるこころで・・・。ここには真新しさしかない。それは、動揺を誘えば、誘わないこともある。次の瞬間に、平然としていることを、別の長さだけが知っている・・・。