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 見限ることで何の優位をも獲得しない。もう駄目だ、と口に出す自由だけがあって、切り捨てられる理由も力も判断力も、言ってみれば頭脳がなかったのだ。いや、頭脳自体がない?

「いえ」

こう言ってよければ頭脳しかなかった。どこまでも正しいものはどこまでも理屈であって、そんなところに人が中心を定めている訳ではない、ことが分かるただし理屈で次へ次へと進んでいる時間だけそれは分からない。

「説明に疲れてしまったのだ」

といつか言っていたようだが、それは伝わらないからではなかった。どうも微妙にズレている。そんなところに呼吸がないということにいちいち触れるような気がしたからだった。それでは矛盾するのではないですか、という声があちこちから聞こえる、なかで、目の前の流れのどこにも矛盾が見つからない(矛盾のむの字もない)ことに気づかされるのだ。言葉で考えているのだから、あるやなきかのところへ追い込まれてしまうのだ。