<709>「重なる、重なる、巻く」

 無言の人、同じ動きがないと、突然漏らして、複雑な顔とて巻き始めてゆく。物凄い速さのなかにある訳でもなく、ひらめきがそこらじゅうから噴き出し始めているので、初めからここまでを真っすぐな一本の糸として見ることは出来ない。

 おそらく混ざったり、あちこちに飛び飛びになったりしているものが、コツン、という音で一斉にこちらに顔を向ける、そんな動きをひとつ、あるいはひとりと呼んでみるのかもしれない。なかには、こちらとあちらではまるで関係がないのだと言っているところもある。事実まるで関係がないように見えて、確かにその通り関係もないままそのままでひとりだった。

 重ねる、というそんな偉い話ではなく、重なる、という、一体全体訳の分からないものが増えて次々に関わりが生まれてくること自体を見つめている。どうもある一方向へただ進んでいくのではないことだけをぼんやり浮かべて、まとめるという考えを外に出してゆく。